廃墟で見つけたモノ
投稿者:Mine (24)
知人のAから以前聞いた話が個人的に怖かったからせっかくなので共有したい。
二十歳になるかならないかの頃に自動車免許を取得したAは友人B、Cと3人でドライブがてら廃墟に探検に行く事になった。
Aとしては行き先は海でも山でも何処でもよかったが、Bが全国各地の廃墟を紹介しているというサイトで見つけて気になってる場所がある、と持ちかけて来たのが元は児童養護施設だったというその廃墟だった。
車で1時間位というドライブとしては程よい距離だったし、Cにも異存は無いようですんなり決まった。
その廃墟を紹介しているサイトによれば昭和の終わり頃に閉鎖され、そのまま廃墟と化したらしい。昼間にも関わらず建物内を歩く人影を見たり、叫び声が聞こえるなどの怪奇現象があるとのクチコミも掲載されていた。
出発の前日、Aはネットで元は児童養護施設だった頃の施設名を調べてみた。
数少ない情報によればどうやら閉鎖された原因は施設長と数名の職員が逮捕され、実刑判決を受けた為と分かった。
どのような罪状かについてはAが調べた限りではヒットしなかった。
そしてドライブ当日。
午後8時頃に出発し、着いたのが9時半近く。慣れない運転ということもあり予定より遅れてしまった。
郊外のさらに閑散とした場所に建つ廃墟は裏手が鬱蒼とした森となっていて薄気味悪さに拍車をかけている。
外壁が白一色のその2階建ての建物はサイトの画像でみたよりは小ぢんまりとした印象を受けた。
壁には雑多な落書きに混じってアーティスティックなグラフィティも描かれていた。
「うおー、やっぱ夜に見ると雰囲気あるな」
辺りを懐中電灯で照らしながらCが口にする。
草が伸び放題の荒れた敷地内にはキリンを模した滑り台や座板が無くなったブランコがあり、どれも長い年月で風化し朽ち果てていた。
玄関に灯りを照らしながら足を踏み入れると縦に伸びた廊下があり、ゴミが散乱してたり所々床が抜けていたりやはり落書きだらけで、期待を裏切らない濃密な闇が漂う廃墟然とした状態だった。
奥に並んだ各部屋はそれぞれスタッフルームや机の並んだ学習室等で、子供達の遊び場だったであろう広めの部屋には黒ずんで中の綿が飛び出たウサギのぬいぐるみや破られてくしゃくしゃになった児童書等が落ちていた。更に奥へ進むとそこは食堂だったらしくキッチンがあり大きなダイニングテーブルが置かれている。砕け散った食器類が床に散乱していた。
陶器が割られ茶色の汚水が溜まった和式便所、ヘッドのないシャワーホースだらけで鏡が砕かれた浴場を見て回り、3人は次に2階へと進む。
廊下の左右に2つずつドアがあり開けてみると元は2段ベッドだったであろう板組みと学習机があった。どの部屋にも同じ物があったから2階は児童の居住区だったらしい。
全ての部屋では壁や天井が崩れかかっていた。
一つ気になったのは、どの居室にも先端に輪っかのような物が付いた用途不明の鎖が壁から伸びていたことだ。
廊下の奥はベランダがあり、2階はそれで終わりだった。
「なんかマンネリしてきたな、幽霊らしきもんも出ねーしさ」
初めの内は先頭に立ち楽しそうにはしゃぎながら各部屋を見て回ってた言い出しっぺのBだが、何も心霊的なイベントが起こらない為に徐々に退屈そうな態度へと変わっていく。
「もうそろそろ帰るか?」とAが促すと
「1階にまだ見てない部屋あったろ」とCが言う。
玄関に入りすぐ右にある”施設長室”とプレートのある部屋で、ドアノブが外れて開かないために後回しにしていたのだ。
窓はあったが鉄柵が嵌められていたので外側からは入れそうにない。
「どうやって開けるよ?」
「3人で蹴破ればいーだろ」
「そんな事して大丈夫か?」
「大丈夫だろ。廃墟なんだし」
そんな会話を交わした後、3人はドアを同時に蹴り続ける。
何回目かの後で蝶番が木枠ごと外れ、扉が向こう側に倒れた。
虐待で殺されたのか心が痛みます。
廃墟だからと言って、物を壊すのはいけませんね。
C君は一度お祓いした方が良いかと思います。