忌蛇千箱(イシャチバコ)
投稿者:rark (32)
思わず声が出ます。茂みから出てきたのは、体調4.8メートル程の大蛇。だけなら良かったのですが、蛇の頭の部分。そこが明らかに人の頭なんです。髪は長く、目はギョロっとしていて、顔は蒼白。
まずい。本当にまずい。いくら夢から覚めようとしても、夢は僕を離してくれない。それどころ頃か、悪夢は増すばかり。
突然その人面の大蛇の口から通常サイズの蛇が出てきたかと思うと、大口を開けて僕の顔に飛びついてきます。そしてそれが、夢の中で自分の右目に映った最後の光景でした。
「あああ!!…ゲホッ!!ア゙ア゙…」
夢の中ながら、僕はがむしゃらに叫んでいたと思います。痛い。夢の中のはずなのに、ものすごく痛い。
そして、次は人間の顔をした大蛇が飛びついてきて──────
「はぁ…はぁ…ゲホッ…」
どうやら夢から覚めたようです。僕はさりげなく、左側目を隠して右目をパチパチさせてみる。当たり前ですが、どうやら右目はあるようです。親は仕事で早出なので家には僕一人。
とりあえず顔を洗おうと、洗面所に向かい、鏡を見た時、僕はギョッとしました。右目の白目の部分が、真っ赤になっているんです。充血とかじゃない。真っ赤。1年前に、目を強打した時、これと同じ症状になったのですが、目を強打なんてしていない。(寝てる間に打ったのか?)
とりあえず時間もないので、制服に着替え、部活に行くため、ドアノブに手を掛けます。すると、
「ゲホッ!!ゲホッ!!」
激しい咳が僕を襲います。それに加えて目眩も酷い。
(風邪でもひいたか?)
ドアを開け、駅に向かうためゆっくりと歩きます。夏の暑い日差しもあり、それが余計に僕の体力を削いでいく。
「早く…ゲホッ…駅…電車…乗らないと…駅前の…ゲホッ…交差点まで行けば…!」
すると突然、後ろからガっと3人ほどの男女に押さえつけられ、車の後部座席に乗せられます。しかし、その時の僕は、抵抗する力なんて残っていません。
そしてそのまま、車は発信し、町外れにあるお寺に入っていき、僕はお寺の本堂に通されます。しかし、体に全く力が入らないので、床にうつ伏せになっている状態でした。
すると、住職さんのような人が入ってきて、
「今から、あなたに付いている物を祓います。大丈夫です。すぐに終わるので。」
と言ってお経を読み始めます。それを聞いているうちに、段々と意識が遠のいていき、そのまま眠ってしまいます。
……
気がつくと、僕は和式の客間で眠っていたようで、時計を見ると昼の1時頃。布団から這ってでると、60代くらいの優しい顔をしたおじいさんが入って来て、
「気分はどうですかな?」
と尋ねられます。そしてそこでやっと、吐き気もめまいも。そして窓に映って見えた目は、元通りになっているんです。さっきまでの症状がなくなっていることに気づきます。
「はい。大丈夫です……。」
「それは良かったです。まず、あなたを勝手に連れ去ってしまう形になってしまったのは申し訳ない。言い訳に聞こえるかもしれませんが、危ない状態だったので。」
ポカンとしている僕に、おじいさんは続けて話続けます。
「とりあえず、事態を説明しましょう。まず、あなたのポケットにこのようなものが入っていました。」
中国の呪いも恐ろしさですね。
楽しく読ませて頂きました。
4.8メートルて刻むなぁ