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kanaさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

夏休みに田舎であったこと(加筆修正版) ※「愛なき子」前日譚
長編 2023/07/02 19:35 11,886view
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「ちっちゃーーい、カエルの子供?」とボクが聞くと、イズル兄ちゃんが「カエルの子はおたまじゃくし」とつぶやきました。

「そうだった!!」

東京では見たこともない小さな緑色のカエル。よくみると湿った草っぱらにいっぱいいます。
気が付くとボクはユウキと一緒にカエル採りを始めていました。
捕まえたカエルは水を張ったバケツに次々と投げ入れ、ボクらはその中をヒョコヒョコと泳ぐカエルたちを眺めていました。とてもかわいいカエルたち。

「もうごはんよー」母が呼びに来てくれました。
いつの間にか、西の空がだんだんとグラデーションに染まってきています。

「うっわ、ナニ捕まえてんの気持ちわるーい! 鳥肌たつ~~」

呼びに来た母は、バケツいっぱいのカエルを見ると、二の腕をこすりながらそそくさと逃げ帰っていきました。どうやらせっかく捕まえたこのカエルたち、家の中には持ち込めないようです。仕方なくボクらはバケツの中で泳ぐカエルたちが逃げないようにフタをかぶせ、

玄関の外に置いて家に入りました。

「ご飯の前にちゃんと手を洗ってよー!」

「ハーイ」

よく見るとカエルを触った手には茶色いベトベトしたものがこびりついていました。
叔母さんがそれを見て教えてくれたのですが、アマガエルは皮膚から毒を出すとのこと。
ベタベタしてなかなか落ちない毒を念入りに石鹸で洗い流す羽目になりました。

居間に行くと大きな座卓が二つ並べられ、ジンギスカンの準備が整っていました。
ビールも用意されて大人たちは宴会をはじめるようです。
ボクも以前一度食べて大好きになっていたジンギスカン。ここN町はジンギスカンも有名らしいです。タレに漬けてあるラムもいいけど、丸く薄く切ったマトンもすごくおいしい。

叔父さんの自慢話もはじまりました。「このタレにはN町で獲れた林檎をすり下ろして入れてあるから、甘くておいしいぞ」叔父さんはこの町で林檎の品種改良の仕事をしているのだとか。だから叔父さんにとっては林檎とジンギスカンは自慢のタネというわけです。

美味しいお肉と煙と、そして酔っぱらった大人たち。宴もたけなわ。
外はもうすっかり暗くなって、まるで宇宙そのもののような満天の星空になっていました。

食事も終わり、叔母さんが「タカシちゃん、花火あるよ?みんなで遊ぼっか?」
と誘ってくれました。

「やったー!やるやる!」

広い庭に出て花火の準備をはじめます。

「火の始末はちゃんとするのよ!バケツに水汲んで来てね!」

叔母さんにそう言われてハタと思いだしました。
バケツならさっき捕まえたカエルを入れたままフタをかぶせています。

「もう~カエルなんてまた捕まえればいいでしょ? 逃がしてきなさい!」

3/6
コメント(5)
  • kamaです。夏が来るまで温めておきました。「夏休みに田舎であったこと」の加筆修正版です。
    こちらのお話は以前ボクが書いて大変好評をいただきました「愛なき子」というお話の前日譚とんなります。そう、こっちの話の方が先なのです。愛なき子はこのお話の主人公が社会人になってからのお話です。
    ・・・ではなぜこちらを後にしたかというと、おばあちゃんがこのお話で亡くなってしまうので、愛なき子より先に公開するとネタバレになってしまうからですね。
    ぜひ、今作を読んだ後で、また愛なき子も読んで見てください。
    世界観が広がってより楽しめるかと思います。

    2023/07/02/19:45
  • 夏の雰囲気っていいよね。

    2023/07/03/08:57
  • 夏はジュブナイルな感じがいいよね。

    2023/07/03/12:48
  • 愛なき子も今回のお話もとても良かったです。

    2023/07/11/00:21
  • ↑kamaです。コメントありがとうございます。怪談も、夏の思い出になるといいですよね。

    2023/07/14/06:44

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