夏休みに田舎であったこと(加筆修正版) ※「愛なき子」前日譚
投稿者:kana (210)
「・・・タカシ、プールで遊ばない?」とユウキが誘ってきます。
「プール! 行きたい!! 」ボクは即座に答えました。
そう、実はここにはプールがあるのです。と言っても、叔父さんの家のプールではなく、叔父さんの家から道路を挟んですぐ隣に町営の小さなプールがあるのです。
そこは誰でも無料で使えるのですが、地元の人たちはもう飽きているのか、ほとんど誰も入っておらず、まるで貸し切りプールのようにして遊べます。
「おまえ、着いて早々にプールかよ~」父親に半ばあきれ顔で言われたものの、
水遊びが大好きだったボクは、もうユウキと一緒にプールへ行く支度をしていました。
「イズルも行ってちゃんと見てやんなさい」と叔母さんが言ってくれて、
ボクら3人でプールへと向かうことになりました。
歩いて10秒、プールに着きました。
プールの水に自分の身を浸す。この瞬間が得も言われぬ快感。
「ひぇ~っ!!」と自然に声が出てしまいます。
イズル兄ちゃんはプールには入らず、プールサイドに腰かけて、足だけ水につけてこっちを見ています。まるで監視員さんみたい。
ボクは泳ぎはそれほど得意ではありませんでしたが、潜水するのが大好きで、水の中に潜った方が自由に泳げるくらいでした。
プールの底にへばりついて、水圧を楽しんだりするのも好きです。
しばらく遊んでいるとユウキが勝負をしようと言ってきました。
「どっちが長く水中で息を止めていられるか勝負だ!」
「よーしわかった」
息を思いっきり吸い込んで二人とも水中に潜ります。
ユウキは水中で体育座りのような恰好をしており、ボクもマネをしようと思いましたが、体がふわふわと浮きそうになってなかなか体勢を維持できないので、あきらめてヒラメのようにプールの底にへばりつく作戦に出ました。
しばらくして、だんだん苦しくなってきました。ユウキはまだまだ涼しい顔をしています。
(ダメだ、ボクの負けだ!)そう思って水面に上がろうとした時、ユウキのやつがボクの両肩をガシっと捕まえて浮かせまいとしてきました。
(オイオイ、勘弁してくれマジでもう無理だって!)ブクブクと泡を出して暴れるボク。
ザバーン!と波音を立て、そこにイズル兄ちゃんが飛び込んできてボクを引っ張り上げてくれました。「なにやってんだよ、溺れちゃうぞ」
ハアハアと大きく呼吸をするボクを横目に、「オレの勝ち~」とニコニコしながらユウキが勝利宣言をしてきました。「負けた~」
「よし、じゃあもうあがれ。タカシ、唇が青くなってるぞ」
イズル兄ちゃんにたしなめられました。
水遊びをしているとついつい楽しくて、体が冷え切っているのも忘れてしまいます。
プールを出てふと足元を見ると、小さなカエルがたたずんでいました。すごく小さい、指の先ほどしかないようなアマガエルです。
kamaです。夏が来るまで温めておきました。「夏休みに田舎であったこと」の加筆修正版です。
こちらのお話は以前ボクが書いて大変好評をいただきました「愛なき子」というお話の前日譚とんなります。そう、こっちの話の方が先なのです。愛なき子はこのお話の主人公が社会人になってからのお話です。
・・・ではなぜこちらを後にしたかというと、おばあちゃんがこのお話で亡くなってしまうので、愛なき子より先に公開するとネタバレになってしまうからですね。
ぜひ、今作を読んだ後で、また愛なき子も読んで見てください。
世界観が広がってより楽しめるかと思います。
夏の雰囲気っていいよね。
夏はジュブナイルな感じがいいよね。
愛なき子も今回のお話もとても良かったです。
↑kamaです。コメントありがとうございます。怪談も、夏の思い出になるといいですよね。