夏休みに田舎であったこと(加筆修正版) ※「愛なき子」前日譚
投稿者:kana (210)
母親にうながされて仕方なくバケツを持って向かいのプールの原っぱへと行きました。
逃がそうと思ってフタをはずすと、きっとカエルたちが飛び出してくるはず。
・・・そう思って身構えていたのですが、一向に出てくる気配がありません。
おかしいと思い、恐る恐るバケツを覗き込むと、カエルたちはみんな死んでいました。
水の中で白いお腹を上にしてプカプカと浮いているカエルたち。
「あーあ、いっぱい死んじゃったね」それを覗き込んで言うユウキ。
「えっ、だって・・・カエルって溺れるの?」
「そりゃ溺れるんじゃない?魚じゃないんだから」
「えっ・・・だって、水をいっぱい入れれば泳いでるところが見られるってユウキが言うから・・・」
「でも逃げないようにってフタまでしたのはタカシだろ?」
ボクら二人でたくさんのカエルを殺してしまいました・・・。
「早く戻って花火やろうぜ!!」
何事もなかったかのようにそう言ってカエルの死骸を捨てるユウキ。
「手伝ってよ」
ボクは少し落ち込みながらユウキのバケツを半分持ちました。
捨て終わって、ユウキと一緒にトボトボと家に戻りました。
その後の花火はとてもキレイでしたが、こんなに暗い気持ちのまました花火は、これが最初で最後でした。
花火が終わって家に上がると、ボクたち家族が泊まる客間には、もう布団が敷かれていました。東京だったらまだまだ起きている時間だし、ぜんぜん眠くないボクは少し家の中を探検することにしました。田舎の古い家なので、使っていない部屋もあるそうです。
ボクは暗い廊下を渡りながら、あちこち部屋を見て回りました。
廊下の一番奥に少し大きい部屋があり、そこはおばあちゃんが普段使っている部屋でした。中に入って電気を点けると、とても広くて、そして何とも言えない古臭い匂いがこもっています。天井近くの壁には昔の人の写真が並んでいて、ちょっと不気味な感じ・・・。
部屋の奥には大きな仏壇も置かれています。
「こんなところで何してんの?」
「うわあっ!!」
突然声を掛けられてビックリして振り返えると、そこにはユウキが立っていました。
「わーびっくりした。もう・・・ちょっとおばあちゃんの部屋を探検だよ」
「バカ、ここには入っちゃダメなんだぞ」とユウキが怒って言う。
「え?そうなの?でも、前に来た時はおばあちゃんと一緒にこの部屋にいたよ・・・」
「いいから早く出ろよ、お母さんに怒られるぞ」
「わかったよ、わかったから・・・」
と言いながらふと仏壇の中を見てみると、そこには去年亡くなったおじいちゃんの遺影と、
なぜかユウキの写真も並んでいました。
kamaです。夏が来るまで温めておきました。「夏休みに田舎であったこと」の加筆修正版です。
こちらのお話は以前ボクが書いて大変好評をいただきました「愛なき子」というお話の前日譚とんなります。そう、こっちの話の方が先なのです。愛なき子はこのお話の主人公が社会人になってからのお話です。
・・・ではなぜこちらを後にしたかというと、おばあちゃんがこのお話で亡くなってしまうので、愛なき子より先に公開するとネタバレになってしまうからですね。
ぜひ、今作を読んだ後で、また愛なき子も読んで見てください。
世界観が広がってより楽しめるかと思います。
夏の雰囲気っていいよね。
夏はジュブナイルな感じがいいよね。
愛なき子も今回のお話もとても良かったです。
↑kamaです。コメントありがとうございます。怪談も、夏の思い出になるといいですよね。