無名の山
投稿者:Nilgiri (3)
見た目よりも結構な勾配の道で、
「俺たちしか乗ってなかったんだし、キャンプ場まで送ってくれるくらいしてもいいのにさ。」
と早速Cがぼやく。
「仕方ないだろ。次のバス停で人が待ってるかもしれないんだし。」
Aはいつも通りの正論で返すが、俺たちの中で一番体力がないせいか、すでにちょっと額に汗をかいていた。
「待ってねぇよ。ここまでだって、俺たち以外誰も乗ってこなかったじゃん。」
「それはそうだけど。」
途中、テントなどのキャンプ道具の多いCの荷物を交代でもったり、俺がBの荷物まで押し付けられたりしつつ、15分程度で俺たちはキャンプ場の駐車場に到着した。
到着した俺たちは、ようやく息をついて周囲を見渡したのだが、その光景に驚いた。駐車場から奥のキャンプ場まで見通せたが、そもそもテントもなければ、人もいない。
駐車場には、かろうじて普通車が1台あったが、車の中には誰もいないようだった。バスの時点で何となく予想はしていたものの、俺・B・Cはあまりにも閑散とした景色に絶句した。
ただ、Aだけは、人の少なさに驚きつつも、割り切ったのか
「夏休みといっても、平日だしな。こんなもんかもな。」
と冷静だった。今でこそキャンプはブームだが、俺たちが高校生の頃なんてたいしてキャンプが流行っていた記憶はない。ハイキングコースもあるとはいえ、キャンプ場がガラガラなんて、当時としては驚くことでもなかったのだ。
「山ガール…」
つぶやいたBの哀れなことよ。
しばらく、その場でぼんやりしていた俺たちだったが、
「…キャンプって大体午後から来るもんだしさ。きっと今から人が増えるだろ。」
というCの言葉を信じて、俺たちはひとまず荷物を持って駐車場の奥にあるハイキングコースの入り口まで行った。そもそもテントを張る前に、山頂に登ろうという計画だったからだ。
「荷物を全部持っていくのは大変だし、必要ないものはここにおいていくか。」
Cの提案で、C母のおにぎりや貴重品以外のキャンプ道具や荷物は、入り口のそばにまとめて置いていくことにした。
「せっかくだし、デジカメ持っていくわ。」
と俺が荷物をごそごそあさっていると、ハイキングコースから降りてくる一組の老夫婦が見えてきた。おそらく、駐車場にあった車の所有者だろう。二人は山登りというよりは、ウォーキングのようにごく軽装で軽々とこちらへ歩いてくる。
「こんにちは。」
俺たちは、一応夫婦に向かって先に挨拶した。
夫婦もこちらに会釈すると、おばあさんの方が俺たちに声をかけてくる。
「みんなで、キャンプ?」
「はい。」
「いいわねぇ。まだ誰もいないから、今日は貸切かもしれないわね。上も、私たち以外には誰もいなかったから、ゆっくりできるわよ。」
「誰もいないんですか?」
思わずAが聞き返すと、おばあさんはおっとり返事した。
「私たちは、近くに住んでいるから時々運動に来るんだけど、田舎だし何もないところだものね。キャンプに来る人も、あまり見ないわね。でも、いいところなのよ。上からの景色もきれいだから、ゆっくりしてきてね。それと、火の元には気を付けてね。」
それだけいうと、おばあさんは先に行ってしまったおじいさんを追いかけるように車に向かって立ち去って行った。そして、しばらくすると車は発車し、いよいよキャンプ場には俺たちだけが取り残された。
読み応えありました。
おもしろかったよ。
B君は家出じゃないね。
突然行方不明になり、事故、事件関係ない場合は違う世界に行ってしまったのかもしれない。
背景が目に浮かび、釘付けになりながら読ませて頂きました。
後味まで含めて、とても不可解で不思議な話でした。
変な因縁話がないのがとてもリアルで読みふけってしまいました。
面白かったです!
b君は結局家出なのか、遭難なのか、考えさせられますが、リアルに有り得る話で楽しく読ませて頂きました。恐さよりも不可解でしたね。
面白かったです。
Aは性格上、この異常すぎる事件に関わるのはヤバいと思って割り切ったのか
本当はあの祠の事について知っててBの行方も知ってたのか
それとも超常的な何かに取り憑かれて警告したのか。
何れにせよ真面目とされてたAがあんなふうに友達に対して冷淡になったのは興味深いですね。