無名の山
投稿者:Nilgiri (3)
「ワンチャン、あの車に山ガール乗ってるかもって期待したんだけどな。」
Cがそういうと、Bもあからさまにテンション低くそれに同意する。
「あの1台にかけてたのに。」
「だから言っただろ。山ガールなんて、この辺の山に登らねぇんだって。」
Aは飄々としてものだ。
「おまけに、あのおばあさん、キャンプ客も少ないって言ってなかったか。」
俺がそういうと、BとCは余計にどんよりした顔になった。
「午後からキャンプ客が増えるんじゃないのかよ。」
「いや、俺も家族で2回くらいしかキャンプしたことないから、わかんねぇよ。」
「これ、今日は誰も来ないってことも十分ありえるな。」
Aが追い打ちをかけるように、楽しげに言った。
「…よ、よし、こうなったら、この山で好き放題してやる!ついてこい。」
と、急にBが吹っ切れたのか大声を出す。そして、ハイキングコースの1本道をダッシュで登り始めたから、思わず俺たちは笑った。やれやれといったところだ。Bのように走る気はなかったが、俺たちもBの後から、ハイキングコースを歩き始めた。
俺たちがのんきに歩いていると、Bもいつの間にか速度を落として合流した。山頂まで走り抜ける程のガッツはなかったらしい。
「まぁ誰もいないなら、騒いでも注意されないしな。」
あれほど、山ガールに固執していたBだが、一度諦めるとあっさりとしたものだ。皆がBを憎めないのは、こういうところがあるからだよなぁと思う。
ゆったりと歩きつつ、俺は周囲の景色をデジカメの動画機能で録画していた。
「ただの、山道だろ?そんなもの撮ってどうするんだよ。」
そうCに突っ込まれたが、別に俺も目的があって録画しているというよりは先月買ったばかりのデジカメで何か撮りたくて適当に映しているだけだった。
「特に珍しいものもなさそうだけど、適当に編集して動画サイトにアップしてみたくてさ。」
「あ~おっさんとかが、田舎道の動画とか撮ってるのみたことあるわ。」
「意外なものが受けたりするじゃん。何でもいいから、動画サイトに一度自分の動画あげてみたいんだよね。」
そんな話をする前でAとBは、どんな山なら山ガールがいるのか討論している。ぶっちゃけAも女の子の話になんて興味ないふりをしているけど、実はこういう話題が嫌いじゃないことを俺は知っている。なんだかんだで話があうから、いつもつるんでるんだしな。
べらべらとしゃべりながら、特に代り映えのしない木々の間の狭い一本道をすすんでいると、道の先に少し開けた場所があるのが見えてきた。どうやら道の脇に東屋があるようだ。
近づいてみると、割とまだ新しい様子のその東屋は中にテーブルと椅子が4つ備え付けてある。まだハイキングコースを登り始めて10分程度。休憩するほど、疲れてもいなかったが、真新しい雰囲気に誘われて俺たちは東屋の中へ入った。
「最近作ったのかな?」
「こんなところに、わざわざ小屋を作るなんて税金の無駄だな。人も全然こないのに。」
まだ学生のくせに、Cがぶつくさ生意気なことを言っている。
「まぁ確かに、なんでこんなところに作ったんだろうな。登り始めてすぐの場所なのに。」
ハイキングコースは往復1時間程度の短いコースだ。道の途中にこれほど立派な東屋を作る必然性がわからず、俺たちは疑問に感じつつも椅子に座った。
読み応えありました。
おもしろかったよ。
B君は家出じゃないね。
突然行方不明になり、事故、事件関係ない場合は違う世界に行ってしまったのかもしれない。
背景が目に浮かび、釘付けになりながら読ませて頂きました。
後味まで含めて、とても不可解で不思議な話でした。
変な因縁話がないのがとてもリアルで読みふけってしまいました。
面白かったです!
b君は結局家出なのか、遭難なのか、考えさせられますが、リアルに有り得る話で楽しく読ませて頂きました。恐さよりも不可解でしたね。
面白かったです。
Aは性格上、この異常すぎる事件に関わるのはヤバいと思って割り切ったのか
本当はあの祠の事について知っててBの行方も知ってたのか
それとも超常的な何かに取り憑かれて警告したのか。
何れにせよ真面目とされてたAがあんなふうに友達に対して冷淡になったのは興味深いですね。