【猫婆事件】-事件記者 朽屋瑠子-
投稿者:kana (216)
「へぇ~」と思いながらボンベイの仔猫の値段を見る朽屋。
「へっ?さささ、30万円?!」
「あ、ハイ~こちら、やはり人気の猫ちゃんとなりますので・・・もう次の入荷はいつになるかわからない状態で」
「いや、まぁ・・・今日はちょっと下見させていただくってことで、また後日検討して来たいと思います~」
「あ、そうですか~(ちっ)」そう言って朽屋から黒猫を取りあげて元に戻す店員。
「さすがに釣りのエサにしては30万は高いわよねぇ~」
「えっ?何か・・・エサですか?フードならこちらに・・・」
「あっ、いいんです いいんです。じゃあまた来ますね~」
可愛い猫に後ろ髪を引かれつつ、その感触を忘れぬうちにジムニーに戻る朽屋。
車内に戻るとゼロハリバートンのアルミ製ミニアタッシュケースから、暗褐色の卵のようなものを取りだした。その卵を胸元に抱き、目をつぶって何かを念じる。紫色のオーラが卵の周囲に渦巻く。そして光り輝きながら、それは仔猫の形になって行く。先ほどまで朽屋が触らせてもらっていたボンベイそっくりの黒い仔猫が今、朽屋の胸元で「にゃーん」と鳴きだした。
暗褐色の魔力が籠っている卵を中心に、朽屋の霊力と先ほどまで抱いていた仔猫のイメージを強く融合して、本物そっくりの仔猫を作り出したのだ。
「うっわー、このままウチで飼いたい~。作戦やめてウチにおいでよ黒にゃんちゃん~
むちゅぅぅ(*´3`*)」
仔猫のネコパンチが朽屋の鼻先をぺちんと叩く。ついでに前足が朽屋の両眼を塞ぐ。
「ぅわかったわよおぉぉぉ」
仔猫を助手席に乗せて走り出す朽屋のジムニー。
・・・・・・
お婆さんの家まではちょうど500メートル。
例の捨て猫が置かれていたすすきの原に隣接する現場だ。
ここはK子ちゃんが化け物と出会った当時とあまり変わっていない。
朽屋はそこからさらに数百メートル離れた丘の上から現場をスコープでのぞいていた。
ここからなら、月明りでも狙撃できる。
朽屋はジムニーのラゲッジスペースからライフル銃を取り出す。
日本メーカーの海外向けライフル『TSP X』を逆輸入して朽屋に合うようにカスタムしてあるモデルだ。いつものごとく、朽屋は魔力と霊力を込めた弾丸3発を用意する。
準備が整うと、朽屋はそこでコーヒーを沸かした。
昔の戦闘機の絵が描かれた愛用のマグカップだ。
化け物を釣るエサとして用意した黒猫にはチュールをあげた。
しばし和む。
kamaです。先日投稿させていただいた「仔猫」というお話の後日談となりますので、合わせて読まれると楽しさ倍増かと思います。
またこの「朽屋瑠子」シリーズも今回で5作目となりますので、合わせて他の朽屋瑠子シリーズ、とくにケルベロスが登場する1作目を読まれると、世界観が広がって楽しめるかと思います。
朽屋瑠子シリーズは、自分で書いてて自分が一番楽しんでるかもしれません。
次回作もお楽しみに~
後日談待ってました!瑠子が見た猫の夢が仕事に繋がった所も不思議ですが、お茶目で可愛らしい一面が見られました。ケルベロスが従順になったのも猫好きの瑠子だからかな?ちゅーるのくだりがクスっと笑えました!
↑kamaです。ありがとうございました。
実はケルベロスはいろいろな伝説の中で、パンなどの食べ物をもらってごまかされることが多く、甘いもの好きとも言われています。チュールはおいしかったのかもしれませんね。
なんとびっくり、麗子の怪談恐怖箱さんで、この作品が朗読されてる!