こっくりさんの恩恵
投稿者:さよなら新人類 (3)
中学生の頃、こっくりさんが流行っていた。
何人かのオカルト好きな同級生が放課後に集まり、あれこれ他愛のない質問をしていたように思う。
俺も何回か、気が進まないながらも参加することがあった。
ある日の放課後。
いつものように俺を含めた同級生が数人集まり、こっくりさんをやり始めた。
そのうち、参加していた友人の天野が、こんな質問をした。
「こっくりさんこっくりさん、俺のホームページは人気になりますか?」
その頃、天野は当時流行っていた個人サイトを運営していた。
俺も何度か見てみたことはあるが、自己紹介とか日記とかのコンテンツしかない、どこにでもありそうなサイトだった。贔屓目にも、とても話題になりそうなコンテンツがあるようには思えなかった。
天野の質問を受け、鳥居のコインは少しずつ「はい」の方に動き出し、やがてそこで止まった。と言っても、明らかに天野が自分で動かしてはいたが。
「見ろよ! 今に人気が出るってよ!」
自分で動かしたくせに大喜びする天野を見て、人気になるにしてもせいぜい身内受けじゃねえのか? と内心思ったりもした。
結局その日は何事もなくこっくりさんを終え、それぞれ帰途についた。
それから半月ほど経った頃。
昼休みに弁当を食べていると、天野が嬉しそうに話しかけてきた。
「聞いてくれよ。うちこの間から犬を飼い始めたんだけどさ、それをホームページで載せたらめちゃくちゃ反響があったんだよ」
「次々に可愛いだの天使だのメールが来てさ。あまりに反響があるから、そのうち掲示板を設置しようと思うんだ」
「俺、これからペットを中心にページを作っていこうかな。こっくりさんの予言って、こういうことだったんだなあ」
最後に言ってることは正直よく分からなかったが、それでも大喜びしている天野を見て、ほほえましい気持ちにはなった。
それから先も、ことある毎に天野はサイトの様子を俺やクラスメートに教えてきた。
「掲示板を設置したとたん、今までメールを送ってきた人々が一気に押し寄せてきた」
「チャットを設置したら毎日人が訪れ、毎晩ペットトークで盛り上がっている」
「あまりの人気ぶりなので、親に頼み込んで2匹目の犬も飼うことにした」
などなど、順調な様子ばかりが耳に入る。
俺も実際に奴のサイトを覗いてみたが、確かに以前とは比べものにならないほど盛り上がっている様子で、どうやら界隈ではひとかどの存在となっていたようだ。
すっかり人気者となった天野が正直羨ましく、ひょっとしたらこっくりさんのご利益って本当にあったのかも、とも思うようになった。
やがて中学を卒業し、俺は他県の高校に入学することになり、それっきり天野とは離ればなれとなってしまった。また、そこで就職することにもなったため、地元から離れて生活する日々が続いた。
そのうち、天野のことも例のサイトのことも、少しずつ記憶から薄れていった。
川上も、家族も、みんな家で死んでいた。のところ川上じゃなくて天野じゃないですか
さよなら新人類です。ご指摘、ありがとうございました。
訂正いたしました。