【猫婆事件】-事件記者 朽屋瑠子-
投稿者:kana (216)
やがて静かな農村にゆっくりと夕闇が迫ってくる。
朽屋が無線機でどこかへ連絡を入れる。
「朽屋、状況開始」そう言うと、黒猫を放った。
「じゃ、手はず通りガンバッテね黒ニャンちゃん」
「ニャーン」
仔猫が一匹、目標現場へと駆けていく。
朽屋はその姿をずっとライフルスコープで追う。
朽屋はここで致命的なミスに気が付いた。
「うぅ、可愛くて黒猫をコピーしたけど、暗くなったら見えにくい!!・・・どうしよう!」
朽屋にしては珍しい凡ミスである。昔飼っていた黒猫への愛情が、朽屋の判断を
数%狂わせたとでも言おうか・・・。まだまだ可愛さに負けるお年頃でもあった。
スコープの中の仔猫がだんだん心配になって来た。いつもより鼓動がして指先が震える。
「いかーん、狙撃に影響が出る!」
そう思った矢先、ススキの原の中を猛スピードで移動している影を見つけた。
「ヤバイ、想定位置よりも早く敵が動いた」
朽屋はライフルの照準を移動するターゲットに合わせなおす。が、速い!
「ヤバイ、黒ニャン逃げて!!」
・・・一歩遅かった。ススキの原から猛スピードで飛び出した影は、
あっという間に仔猫に覆いかぶさって捉えてしまった。
「やられた!」
スコープを覗く朽屋。
そこには、今まで俊敏な動きをしていたとは思えない、お婆さんの姿があった。やつだ、間違いない。人間の姿をしているが、口は耳まで裂け、今捕まえた仔猫を咥えて振り回している。
朽屋はその化け猫のようなお婆さんをスコープに留め、引き金を引いた。
雷鳴のように轟く銃声と共に朽屋の霊力が込められた魔弾が飛ぶ。
が、弾はお婆さんをかすめ、外れていった。
「くっそ!はずした!!猫ちゃん食われたの見て動揺した!!」
化け物は撃ってきた朽屋の位置を確認した。どうやら居所を見つけたらしい。
ものすごいスピードでこっちへ走ってくる。仔猫はもうペロリと丸呑みされた後だった。
「しょうがない・・・最後の手段と行くか」
朽屋はライフルでの狙撃を諦め、ジムニーの天井に着いているルーフキャリアの1本をはずし、中から短槍を取り出した。接近戦やむなしと言ったところか。
kamaです。先日投稿させていただいた「仔猫」というお話の後日談となりますので、合わせて読まれると楽しさ倍増かと思います。
またこの「朽屋瑠子」シリーズも今回で5作目となりますので、合わせて他の朽屋瑠子シリーズ、とくにケルベロスが登場する1作目を読まれると、世界観が広がって楽しめるかと思います。
朽屋瑠子シリーズは、自分で書いてて自分が一番楽しんでるかもしれません。
次回作もお楽しみに~
後日談待ってました!瑠子が見た猫の夢が仕事に繋がった所も不思議ですが、お茶目で可愛らしい一面が見られました。ケルベロスが従順になったのも猫好きの瑠子だからかな?ちゅーるのくだりがクスっと笑えました!
↑kamaです。ありがとうございました。
実はケルベロスはいろいろな伝説の中で、パンなどの食べ物をもらってごまかされることが多く、甘いもの好きとも言われています。チュールはおいしかったのかもしれませんね。
なんとびっくり、麗子の怪談恐怖箱さんで、この作品が朗読されてる!