リビングのテーブルにY子と向かい合った中年の刑事が、口を開く。
「なるほどS美さんもAさんの娘さんも、その【ケンちゃんクリーニング】に行くと言って出掛けたわけですね。
そしてその時二人とも仕事を断られている。
そしてその後に失踪した。
偶然にしては奇妙に事実が符合してますなあ、、」
刑事はしばらく腕組みをしていたが、やがて再び話しだした。
「分かりました。
S美さんの件につきましては、事件・事故の両面から捜査していこうと思います。そして何か動きがありましたら、そちらに連絡しますので、よろしくお願いします」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
それから数日経った夕刻のこと。
【ケンちゃんクリーニング】のビル1階店舗奥にある部屋。
今は誰もおらずひっそりとしている
そこは8帖ほどの保管庫。
室内中央には、
お客様の受け取りを待つビニールに包装された洋服たちが、天井から鎖で固定された金属のポールに掛けられている。
そのズラリと並んだ様々な洋服の最後尾に一つだけ、洋服ではない奇妙なものがあった。
その大きなビニールに入れられた「人」らしきモノは、フックによりぶら下げられていた。
紺のセーラー服を着たその「人」は膝を抱き蓑虫のように丸まって納まっている。
頭髪は部分部分抜け落ちており顔や手足はどす黒く筋張っていて、すでにミイラのように干からびていた。
2階、
畳敷きの室内中央には大きめのコタツテーブルがある。
奥には商店街を見渡せる窓があり、あとはテレビがあり、タンスがあり、仏壇がありと、どこか昭和を思わせる室内の眺めだ。
テーブルを挟んで、ケンちゃんと白髪の母親が向かい合い座っている。
先ほどまで晩御飯だったのか、テーブルの上には茶碗やお皿が並んでいた。
そしてその間にもう一人誰か、窓を背にして座っている。
ピンクのパーカーを着た若い女性だ。
ただ明らかに普通ではなかった。
彼女も何故だか透明の大きなビニール袋にすっぽり包まれていて、両目を大きく見開き呆けたようにぽっかり口を開いたまま天井を見上げていてピクリとも動かず座っている。
顔は完全に血の気を失っており、既にどす黒く変色していた。
「おう、おう、今度もまた可愛らしいお嫁さんじゃあ」
「洗濯屋けんちゃん」なら知っていますが‥
文章うますぎます。ひきこまれました。