これは、私が塾講師としてバイトをしていた時に体験した、少しだけ背筋の凍る話です。
職務柄、コピー機を使う機会が非常に多いのですが、私は一つだけ強いこだわりを持っています。
それは、「使用後は必ず初期設定に戻すこと」。
しかし、残念なことに、職場にはその習慣を守らない人が少なくありません。
そのせいか、私はコピー機を使い終えた後、あるいは設定がリセットされていないのを見つけると、無意識のうちにリセットボタンを何度も押してしまう癖がありました。特に後者の場合は、少しばかり苛立ちを感じてしまうので、この悪癖がなかなか止められません。
「ピピピピピ……!」
静まり返った教室に、電子音だけが響き渡ります。迷惑な話ですね
けれど、あの日だけは違いました。
コピー機の設定がリセットされていないことに、私は気づかなかったのです。
教科書をガラス面に置き、何の疑いもなく印刷ボタンを押しました。
その瞬間、ふと画面に目をやると、設定は「両面印刷」になっていました。
しまった、と思いました。
しかし、両面印刷であれば、通常はもう一枚の原稿を読み込ませなければ印刷は完了しません。
多少の手間はあっても、取り返しはつくはずでした。
――ところが。
コピー機は、ためらいもなく静かに動き出したのです。
「なんで…?」
まるで、すでに“もう一枚”が読み込まれているかのように。
嫌な予感が胸をよぎりました。
もしかすると、前に使っていた誰かが原稿を一枚だけ残したまま、その場を離れたのかもしれない。
……最悪だ。紙が無駄になることや手間を考えると怒り心頭で、プリントが出てくるのを待っていました。
やがて、プリントがゆっくりと排出されました。
手に取ってみると、表面には確かに私がコピーした教科書の内容が印刷されています。
裏面には何が読み込まれていたんだろう?そう思って裏面をめくりました。
そこには――
「うるさい!!!!」
と、大きな文字が、黒々と印刷されていたのです。
一瞬、時間が止まりました。
静まり返った職場。聞こえるのは、自分の心臓の鼓動だけ。
誰かが、私の鳴らす「ピピピピピ」という電子音に苛立ち、この言葉を残したのでしょう。
そう理解してもなお、背後に誰かの気配を感じるような、不気味な感覚が消えることはありませんでした。























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