友人宅の開かずの地下室
投稿者:キョンシーズ (11)
私がまだ小学生の時、幽霊屋敷に住んでいた友人がいました。
幽霊屋敷とは言っても元々その家や土地に何か曰くがあったわけではないらしく、その友人の家族が全員強い霊感を持っていたのが幽霊屋敷になった原因だった様です。
その友人の家に遊びに行くと、ほぼ100%怪現象に遭いました。
テレビゲームをしているとテレビが勝手に消えたり点いたりするというのはもはや当たり前で、部屋の電気が勝手に点いたり、部屋中に「パンッ!」というラップ音が突然響き渡ったり、部屋のドアが独りでに「キィー……」っと開くなどというのもよくある事でした。
私は最初は怖くて縮みあがっていましたが、「この位は全然平気だよ」という友人の言葉に妙に説得力を感じていたからか、遊びに行く度にその様な現象に見舞われているうちに段々と耐性がついていきました。
しかしそんな怪奇現象に慣れっこだった友人でも家の中で唯一怖くて絶対に足を踏み入れない場所がありました。
それは地下室です。
友人の家は玄関に入ってすぐに二階に上る階段があるのですが、その裏には地下室へと続く階段があり、ある日私が興味本位でその階段を降りようとすると友人は血相を変えて「ダメだッ!!!」と怒鳴りながら私を制止してきました。
友人のあまりの剣幕に私が理由を尋ねると「地下室にはかなり”ヤバいの”がいるんだ。だから俺も絶対に行かないし、家族もみんな地下室には行かない」と応えました。
霊感がとても強い友人の家族が全員こぞって足を踏み入れない”開かずの地下室”。
霊に慣れっこな友人が冷や汗をかく程の”ヤバいの”とは一体何なのか。
怖さよりも興味が勝った私は愚かにもある日その地下室の階段を降りてしまいました。
二階にある友人の部屋で友人と一緒にテレビゲームをしている最中に、トイレを借りに1階に降りた私は用を足し終えると真っすぐ地下室へと続く階段に向かいました。
(少し位大丈夫だろ)と安易な気持ちで地下室へと降りていった私は、狭い階段を降りていき地下室の扉の前まで行きました。
間口の狭いその扉は霊感の無い私でさえ、異様な雰囲気を肌でヒシヒシと感じる程に不気味でした。
なぜかはわからないが、とにかく(ヤバい。早く逃げなきゃ)という気持ちになり急いで階段を引き返そうとしましたが足がすくんで一歩も動けなくなりました。
その瞬間、何かに身体をガッチリと掴まれている様な感覚になり、私は冷や汗をかきながら全身に鳥肌がブワーっと立ち、扉の前でただただ立ち尽くす事しか出来ませんでした。
(ヤバいヤバいヤバい……)と思いながらも体はピクリとも動かず、私は恐怖で震えあがりました。
すると扉の奥から何やら物音が聞えてきました。
最初は「トントントン……」と何かを叩くような小さな物音が聞えていただけでしたが、次第にその物音は大きくなり、「ドーンッ!ドーンッ!」と鼓膜が破れるかと思うほどの大きな音が鳴り響き、私は恐怖のあまりガクガクと震え、目をギュッと閉じて(もう終わりだ……」と子供ながらに自分の命に危険が迫っている事を察知しました。
すると次の瞬間、「何してるのッ!」と友人の母が私の手を引っ張り扉から遠ざけました。
一気に身体を掴まれている様な感覚は無くなり、私は気が抜けたようにその場に崩れ落ちました。
友人の母は急に体の力が抜けて動けなくなった私を抱き抱えて狭い階段を上がっていき、茶の間のソファの上に横たわらせてくれました。
しばらくすると一向に戻ってこない私を心配した友人が二階から降りてきて「おい!大丈夫か?」と私に駆け寄ってきました。
友人の母が友人に事情を説明すると「だからダメだって言ったのに……」と心底呆れた様子。
「マジで地下室だけはダメだって。母さんと婆ちゃんが扉の奥にお札張って一応は閉じ込めてるけど、もし扉開けてたらお前死んでたかもよ?」と友人が言いました。
開けたら死ぬ程の”ヤバいの”とは一体何なのか。
興味は更に増しましたが、私は二度とその地下室の階段に近づかない様にしました。
余談ではありますが、その友人の家は友人家族が引っ越して今は空き家として売りに出されています。
ですがもう何年もの間買い手が見つかっておりません。
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