【より子ちゃん事件】-中学生 朽屋瑠子-
投稿者:kana (210)
教会の一室でルーカ神父が先ほどの朽屋瑠子との会話を思い出していた。
「私の能力のひとつ、ガーゴイルの目を一瞬で見抜くとはな、末恐ろしい子だ」
ルーカ神父には、クレヤボヤンス、いわゆる透視や千里眼と言った能力があった。
教会によく見られる、雨水を排水するために作られた装飾であるガーゴイルの像を模して、具現化し、その目を通して遠く離れた地の観測をすることができた。
ルーカ神父はこの能力を使い教会の外を監視していたのだが、それを朽屋瑠子に見抜かれたというわけだ。もちろん、まだ幼い朽屋にはそんな具体的なことはわからない。
ただ、ガーゴイルと神父の間に何かしらの繋がりがあるのは直感的にわかったようだ。
「それと・・・彼女はキミのことが見えたようだね」
「そうなの・・・クチヤ ルコだって。おもしろい名前よね」
神父の隣には、いつの間にか先ほど朽屋と会話を交わしていた少女がたたずんでいた。
「名前、名乗らなかったんだってね」
「だってお父さんからの言いつけですもの。私がイタリア人だって知られたら大変だもの」
「そうか・・・。ところで彼女、3年後にこの学校に入学することになったんだ。
毎週日曜日には教会に来るようお願いしておいたから、仲良くしてやっておくれ」
「ハイ・・・早く会いたいな・・・」
そう言うと彼女は消えていった。
ルーカ神父にはこの少女の正体がわかっていた。
この教会と学校を創設した初代ダヴィデ神父の娘、ベアトリーチェだ。
先に断っておくが、神父は結婚することができない。
従ってベアトリーチェも血のつながった本当の娘ではない。
それに、二人とも当の昔に亡くなっている。
少女は霊体となって今もこの教会に棲んでいるのだ。
話しは日本が第二次世界大戦に突入する数年前にまで遡る。
イタリアから派遣されたダヴィデ神父は、この地に教会と女子の教育のための学校を設立した。ダヴィデ神父とベアトリーチェが初めて出会ったのもこの頃だ。
ベアトリーチェの父はイタリア人、母は日本人であり、ベアトリーチェはこの地でハーフとして誕生した。生まれたばかりのベアトリーチェに、教会でバッテージモ(洗礼式)を行うために訪れたのが最初の出会いとなった。
ベアトリーチェの父親はすぐにイタリアへ帰国するつもりでいたので、娘には日本名をつけなかった。だが、世界情勢はどんどん変化し、日本滞在が続くこととなった。
数年後、日本は第二次大戦に突入して多くの外国人が国外退去を命じられたり、スパイ容疑で逮捕される事態が発生する。ただ、イタリアはドイツと並んで日本の同盟国であったため、厳しく取り締まられることもなく、教会も学校もそのまま継続されていた。
序盤は優勢に進んでいた日本の戦況も、徐々に悪化しはじめる。
1942年(昭和17年)、米軍初となる日本本土爆撃が行われた。
米空母ホーネットから発艦したB-25爆撃機が、東京・川崎・横須賀・名古屋・神戸を
爆撃し、甚大な被害をもたらした。
kamaです。先ほど投稿させていただいた「より子ちゃん」の裏で起きていた一大事件を書かせていただきました。まず先に「より子ちゃん」を読まれてからこちらを読むと、面白さも倍増かと思います。
またこの「朽屋瑠子」シリーズも今回で4作目となりますので、合わせて他の朽屋瑠子シリーズも読まれると世界観が広がると思います。
あと、今回27ページもの大長編となってしまいました。頑張って読んでくれた方、ありがとうございます。・・・これだと誰も怪談朗読してくれないだろうから、そのうち自分でやろうかな・・・と思ってます。
まるで吸い込まれるような感じで、最後まで拝読させて戴きました。続きを早く読みたいです。
↑kamaです。27ページもあるのに読んでいただき感謝です。
朽屋瑠子シリーズは今後、短編をいくつか出しつつ、たまに長編みたいな、そんな感じで出して行こうと思ってます。
kamaです。
涼君が押し入れの鉱石採集セットを見つけてより子ちゃんに再開するシーンに、
『ローズクウォーツが抜け落ちた鉱石採集セットのように、
涼の心にもぽっかりと隙間が空いているようだった。』
という一文を追加させてもらいました。
・・・詩的でしょ?
まさに、涼君の鉱石セットのくだりがホロリと来ました。短編物も拝読させて戴きましたが、瑠子シリーズはスリルがあっていつまでも読みたくなります。
↑kamaです。ありがとうございます。どこかホロリとくるシーンがあるのって、いいですよね。怪談は怖い話ばかりじゃないと思いますし。
奇々怪々に「怖いボタン」以外も欲しいです~。
また楽しみにしていてくださいね。
ボクはより子ちゃんが泥だらけになっても涼君を追いかけるとこでホロリと来ました。
より子ちゃん単独の話だけ見ていると、子供の誕生日になぜ教会から出られないより子ちゃんが家まで来たのかわからなかったけど、これでつながりました。
↑kamaです。ありがとうございます。朽屋瑠子シリーズは、ボクの作品の裏で起きてる解決編みたいな構成で、オムニバス的に楽しめるようにしてます。これからもよろしくお願いします。
今まで投稿話の中で27ページという最長の話を投稿されたkama先生お疲れ様です。ところで今回の話も場合によっては改稿などで短くなるでしょうか?
↑kamaです。ありがとうございます。改稿の可能性は無いとは言えませんが、今のところは「やり切った感」が強いので、あったとしてもたぶん1年後とか、あるいは改稿しないか・・・という感じです。そうですね・・・やるとしたら戦争の歴史を説明している部分をもう少しはしょるとか・・・ですかね。でもあの部分もより子ちゃん親子がいかにして生涯を閉じたかの部分なのでバックボーンとしては残しておきたい気もしますし。まぁとりあえず今は次の作品を出すことの方を優先したいと思ってます。ありがとうございます。
色々な方の長編作品を読んでいた際にkana様のクッチャルコシリーズを見つけ、初投稿から読ませていただいているのですがこの話で先に読んでいた作品と繋がってとてもテンション上がりました…!!
本当に楽しく読ませていただいてます!!ファンです!!!