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心霊

すだれさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

浮かぶ瑕疵
長編 2023/01/23 15:51 3,457view

引っ越すという友人の、部屋の片づけを後輩と手伝いに行った時の話。

「苦節2年…やっとこのアパートから出られるよ」と友人は段ボールに私物を放り込みながら言った。最近昇格し、金銭に余裕ができたためずっと考えていた引っ越しに踏み出したらしい。

「このアパートもそんなに悪くないような気がするんだが。日当たりも良さそうだし職場にも近かっただろう?」
「職場が近いのは良かったんだけどな…お前なら『瑕疵物件』って言えば伝わるんじゃね?もし彼女なんてできても呼べねえよこの部屋には」
「…ああ、」
「?何ですソレ?」

隣で首を傾げる後輩に、友人と2人がかりで軽く説明する。

「まあ簡単に言えば『いわくつき物件』ってことよ」
「え゛っ…それってまさかおばけ的な…」
「瑕疵物件にも種類がある。日当たりや景観、隣接する施設・事務所のような立地条件だったり、一定の時期に湧く虫害なんかもあるな。君の言うその、『おばけ的な存在』に深く関わるのは、『該当物件で過去に死者が出ているか』かな」

「殺人とか強盗とかですか?」
「無論事件現場である可能性もあるが、あるいは孤独死なんかも含まれるよ。君はそういった物騒な話は苦手かな」
「ああいや、そっちは特に…霊感?とかも全然無いんで。むしろさっき言ってた虫の方が苦手で…」

「お、さっすが後輩!勘が鋭いっつーかセンサー働いてるねぇ」
「えっえっ…ま、まさか…!?」
「あっちの部屋、絶対入るなよ?って言ってもあの部屋は俺が掃除するから頼まないけど」
「絶っっっ対入りません。先輩も面白がって開けようとかしないでくださいよンなことしたら俺帰りますからね…!!」

「おお…わ、わかった。……ちなみにその部屋には何の虫が?」
「そりゃあ黒光りして足がいっぱいの…」
「やめて!話膨らませないで!!」

好奇心に勝てず質問した此方にも非があるが、その後も悪ノリした友人が含みのある笑みで「家賃バリ安かったよぉ」などと言うものだから、虫が大の苦手だという後輩は結局片付け作業をビクビクしながら進めることになった。
後輩に台所(例の部屋から一番遠い)、此方に風呂場の掃除を任せた友人は、掃除道具を持って例の部屋に入る準備をする。

「じゃあちょっと掃除に入るから。水回りは頼んだぞ」
「マジ先輩が入った後鍵かけてもいいですか」
「閉じ込めはさすがに困るわ」
「部屋の換気を考えるとドアは開けた方がいいんだが…」
「わかりました。台所に通じるドアに鍵かけます」
「重症だなこりゃ」

友人と苦笑しながら台所に向かう後輩を見送る。何だかんだ言っても掃除は真面目に引き受けてくれる後輩。全部終わったら何か美味いものでも食わせようと友人と話し、各々の持ち場に向かった。
自身が担当したのは風呂場と脱衣所。天井と壁は済ませてあるからと、残った排水溝の掃除に入る。換気に気を付けながら詰まった髪の毛などを除去していると、台所を磨いていた後輩に呼ばれた。

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