私が小学3年生の頃の話です。
私の上と下に3歳違いの姉と妹がいます。
姉はおっとりとした性格で、多少の出来事には動じません。
悪戯してもしばらく気づかなかったり、
驚かしたりしても「ああびっくりした」と、全然びっくりしていない顔で言ったりします。
そんな姉をからかいたくて、私はよく悪ふざけを仕掛けました。
ある日、姉が食べかけていたお菓子を、隙を見て私と妹が奪いました。
それは姉の大好物だったので、さすがに怒ったのか、
「こらあ、返してよ!」
と、追いかけてきました。
私と妹は1階にある和室の押し入れに隠れ、クスクスと笑いを押し殺していました。
姉の足音が近づいてきたかと思うと、勢いよく襖が開かれ、
「見つけた! 早く返して!」
と、姉が仁王立ちになっています。
「ごめんごめん、お姉ちゃん」
私は笑いながら押入れを出て、続いて妹も出てくるはずでした。
「あれ?」
妹がいつまで経っても出てきません、というより、姿が見えないのです。
布団やら客用の座布団が入っている狭い押し入れに、身を隠す場所などありません。
「ほんとに一緒に隠れたの?」
「うん、襖が開くまでは横にいたもん」
姉は半信半疑のようでしたが、私が妹の名を呼びながらあちこち探しているのを見て、
ただごとではないと気付いたのか、一緒に探し始めました。
「いないね……」
私と姉が途方に暮れていると、妹が2階から降りてきたので驚きました。
妹の話によると、私と一緒に隠れたはずなのに、襖が開いて明るくなったかと思うと、
すぐに暗くなると同時に私がいなくなったので、慌てて押入れを出ました。
すると、そこは2階の和室の押し入れだった、というのです。
妹はすぐに押入れを出たと言いますが、私と姉が彼女を探し始めて確実に5分は経っていたと思います。
1階から2階へ、そして5分のタイムラグ。
あの時、妹は瞬間移動と時間移動をしたことになるのでしょうか?
うまく帰ってこられたけど、もし帰れなかったら……。
それが神隠しというものなのかもしれません。
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