古屋の真実
投稿者:take (96)
友人のKさんから聞いた話です。
彼女の住む地元は、古い住宅地が多く、昭和の半ばに建てられた家が多くあったそうです。
ただし、リフォームや建て替えなどしているところも多く、新しい家と古い家が混在していました。
古い住宅地というのは入り組んでいることが多いのですが、その中でも、ほんの二十軒くらいが固まっている小さな一区画がひときわ入り組んでいました。
うっかり足を踏み入れてしまうと、曲がり角が多くて行き止まりになったり、知らない間に人の家の敷地に入ってしまったりする迷路のようなところです。
その中に、昭和に建ててから、一度もリフォームしていないと思われる古屋がありました。
モルタルの外壁は長年の風雨で劣化し、ところどころ剥げ落ちていて、狭い庭には植えられた木々が手入れもされていないようで、枝は伸び放題で、葉がついている時期などは埋もれてしまって家が見えなくなるほどでした。
表札はかかっているのですが、もう汚れて薄れていまっていて、『木』という字がなんとか判別できるだけです。
Kさんはその近くの、平成半ばに建てられたマンションに住んでいましたが、スーパーへ買い物に行くのに、その区画を抜けていくと近道なので、よく通り抜けていたそうです。
そのとき、その古屋を見て、
(本当に誰か住んでるのかなあ?)
と、疑問に思うほどの荒れ放題でした。
一階の窓にはカーテンが引かれていて、いつも真っ暗だし、玄関先にも空の植木鉢やガラクタが転がっています。
ただ、いつも二階の一室の窓から明かりが漏れているのが唯一、人が住んでいる証でした。
その窓も、薄いカーテンが引かれており、窓にベタベタとステッカーが貼られています。
どんな人が住んでるんだろ? と思いながら、いつも通り過ぎていました。
そして10月末の季節は秋の真っ最中のころ。
時刻は夜の七時近くで、あたりはもう暗くなっています。
いつものようにKさんが、その家の前を通りかかった時です。
裏口のほうから誰かが出てきたのです。
この古屋の住人か、どんな人だろう?
好奇心にかられて、歩みを緩めて観察するような形になったのです。
見えるのは後ろ姿で、どうやら女性のようです。
長い髪に、真っ赤なワンピースを着ています。
ただ、その動きが異様でした。
頭を左右に降り、腕や体をくねくねとくねらせて踊っているように、ゆっくりと歩いているのです。
(え? なんかちょっと……変な人?)
Kさんはその場で立ち止まり、息を殺しました。
もしこちらを振り向いて、こっちに気づかれたら……。
もし、なにか言われたり、されたりして絡まれたら……。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。