私が中学二年生の時のことです。
二歳下の妹は小学五年生で、最近学校でこんな噂が流行っているのだと、おかしな話を聞かせてきました。
「片側人間? なんだそれ」
いま小学校で『片側人間』という幽霊だか妖怪だかが、学校内をうろついているのだというのです。
放課後、生徒が少なくなった時間帯に、見知らぬ子供があらわれる、
あらわれる場所は廊下や教室、運動場や体育館、トイレに至るまで、学校内全域にわたる、
男子が見かけるとそれは男子、女子が見かけると、それは女子の姿をしている、
最初は横向きで必ず体の右側を見せている、
そして不意にこちらを向くと、頭のてっぺんからスパッと切ったように左側がない、
驚いて悲鳴をあげると、右手を前に差し出し、右足だけでぴょんぴょんと飛び跳ねながら追いかけてくる、
捕まると体の左側を奪われて存在を取って代わられ、今度は奪われたほうが『片側人間』になってしまう、
自分が人間に戻るには、同じ性別の子の『左側』を奪わなければならない、
ということです。
「なんなんだよ、それ」
私は呆れて笑うしかありません。
「俺がいたときは、そんな話聞いたことないぞ」
「そりゃそうだね、ここ三ヶ月くらいで急に出てきた噂だもん」
妹も苦笑気味で言います。
「だいたい、捕まったら体の左側を奪われるって……そんな目にあったやつがいるのかよ」
「さあね……誰が言い出したのかはわからないけど、そういうことらしいよ。じつはもう何人か『片側人間』に取って代わられた子がいるんだって」
「小学生ってアホだなー」
私が笑うと、
「自分だってほんの二年ほど前は小学生だったでしょ」
妹はちょっと憮然とした顔で言いました。
「おまえだってそんなもん信じてるわけじゃないだろ」
私が言うと、
「当たり前でしょ……でもねえ、もとになる話、というか、噂の発生元は心当たりがあってさ」
妹は頬に指を当て、ちょっと首を傾げます。
口裂け女、首なしライダー、トイレの花子さんなど、私の親世代、もしかしたらもっと前からあったような『学校の怪談』や『都市伝説』が、何年か周期に世間で、また、限られたコミュニティで流行することがよくあります。
その例に漏れることなく、妹が通う小学校全体で、往年の『怪談話』がブームになったそうです。
その中でも、とりわけ生徒の口にのぼったのは『テケテケ』という怪異の話です。
鉄道事故に遭った少女が、上半身と下半身を轢断されてしまい、またそこが寒い地域で、血管が凍って止血されたために、即死せずしばらく苦しんで亡くなった。
意識不明中に幽体離脱してたってことなのかな
生霊かな