林間合宿の肝試し

中学２年生の夏、林間合宿に参加しました。
宿泊施設は、奈良県の山の奥にある旅館でした。毎年、うちの学校が使っているらしく、旅館の人も慣れていて、親切にしてくれました。ご飯も美味しく、お風呂も広く、楽しい林間合宿の始まりでした。

ところが問題がひとつだけ。その旅館の最大の特徴は、隣が大きな墓地だったことです。隣接する山がまるごと、小高い墓地になっていました。窓を開ければ墓地全体が見渡せました。

「こんな漫画みたいなシチュエーションの旅館ってある？」
「ありえないよね～」
生徒たちは、口々に言い合っていましたが、３００人近くの生徒が泊るので、さほど怖くはありませんでした。
「窓さえ開けなければ見えないから！」
確かにそうですが、霊感のある人にはちょっと苦手な場所でした。

そして、お約束の肝試し大会が始まりました。これも毎年の恒例のようです。肝試しと言っても、墓地の頂上に上って行って降りてくるだけの単純なものでした。

私が上っていると、前を歩いていた担任の先生と並びました。
「ああ、疲れた！」
先生は、近くの墓石に腰をかけてしまいました。
「先生！いけませんよ、罰当たりな、祟られますよ！」
「大丈夫よ～幽霊なんていないから」とケラケラ笑っています。
私はチラチラと見え隠れする、影が見えていたので気になりました。

お約束通り、肝試しの後、担任の先生はギックリ腰を起こしました。
死者を冒涜してはいけません。