職人芸
投稿者:件の首 (54)
長編
2022/11/17
21:24
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赤ん坊が詰まっていた。
いや、正確にはその言い方は正しくない。
赤ん坊の破片だ。
バラバラになった赤ん坊のパーツが、コンテナにぎっしりと詰まっていた。
「な、こ、これは?」
「安心しろ、少なくとも死因は合法だよ」
「合法って、赤ん坊の死体……」
「これは堕ろされた胎児だよ。本来は色々書類を書く必要のあるゴミだが、4次受けにもなると責任もどこやらだ。丁度良いから、こっちで有効活用してやる事にしたんだよ」
「しかし……なんだってこんなバラバラに」
手足も頭もバラバラになっていて、長く見ていると吐き気がまた戻って来そうだ。
「そうしなきゃ、母親から出せねえだろ。知らんのか」
社長は包丁で一つ一つのパーツを拾い上げ、骨を外す。
「未成熟の骨はそこまで気にしなくて良い。大きいのだけ外せ。背骨とかな」
「人間の肉なんて、聞いてませんよ」
言いながら、あの昼休みの事を思い出す。私は……いや、私たちは、あのハンバーグを。
「本当、知らないんだな、お前は。人権は一部でも出た瞬間から死ぬまでの間にしかないもんだ。こいつらは、母親の腹の中で、一度も外の空気に触れる事もないまま死んだ。つまり俺たちはさ」
社長は血まみれの包丁を持ったまま、にぃっと笑った。
「『人間は』喰ってねえのさ」
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そもそも闇医者が未だに存在しているという事だね。