新居にて
投稿者:件の首 (54)
目が覚めたのは、午前0時を回った頃だった。
仕事をしている時であれば、寝る準備をするぐらいの時間だ。
少しおかしさを感じつつ、私はトイレに行く。
田舎だから汲み取りを覚悟していたが、浄化槽ながら水洗トイレがきちんと完備されていた。
どうも昭和の田舎のイメージしか持っていないのだろう。
洋式トイレの蓋を開けた。
と。
中に黒いものが見えた。
「え」
一旦蓋を閉める。
それから、ゆっくりと蓋を開いた。
ずるり、と、それが動いた。
固まって見えたものから、一本がそう、にょろりと伸びた。
「蛇!?」
声に出していた。
洋式便器の中で、蛇が蠢いていた。
慌てて水を流す。
水流に少し身もだえしながら、一気に蛇は流れ去った。
「はぁ、はぁ……」
背中に嫌な汗が出る。
田舎に越そうというのだ、蛇を見て逃げ惑う程でもないが、そこまで得意でもない。この距離で見たいものではない。
配管のどこかに破れ目でもあって、入り込んでいるのだろう。
とりあえず追い払ったが、座っている時に噛みつかれでもしたらかなわない。
明日、不動産屋に抗議して、早速修理を依頼しよう。
でも、とりあえず何かで栓をするなり、殺虫剤を流すなり、上がって来られないようにしなければ。
そう思いつつ、廊下に出た。
ずる、り。
踏み出した足が滑った。
スリッパ越しに弾力のある感触。
そして、じたばたと動き始めた。
トイレの外の床にも、蛇がいた。
踏まれて痛かったのか、にょろにょろ暴れている。
「う、うわ」
気が付けば。
廊下の端から端まで、あちこちに黒い影があった。
震える手で、手探りで灯りを付ける。
「わああっ!」
無数の蛇が、床を這い回っていた。
気持ち悪っ
ためはち
年取ってからの田舎暮らしは止めたほうが良いです。