私は、ある意味では死にました
投稿者:タナカ(仮) (1)
翌朝。
悪い夢を見た、と思ってベットから起き出して、部屋の洗面所で恐る恐る鏡を見てみましたが、顔はもとに戻ってはいませんでした。
団子鼻で丸顔の見慣れない顔が私を見つめ返していました。その後、誰に会っても、相手はまったく違和感を覚えている様子はありません。まるでこれがもともと私の顔だったとでも言うように。
すぐ後の夏休みに実家に帰省したときに会った家族や親戚にも、なにも言われることはありませんでした。実家にあった卒業アルバムも、家族写真もなにもかも、全部、全部…あの顔にすり替わっていました。
当時、大学進学前に交際を始めたひとと遠距離恋愛をしていたので、実家に帰省した後に、すがるような気持ちで彼女に会いに行きました。あのひとにだけはわかってもらえるのではないか。そう思っていました。しかし、無駄でした。
「もうひとりの自分に遭遇してしまうと死ぬ」
確かにこれまでの私は、ある意味では死にました。そして、たぶん、彼も死んだのです。互いに一体となることで、私は顔を失い、彼は自我を失いました。
こうして自分の顔を失った私は、心に穴が空いていきました。もしかして、なにかの拍子に自分の精神が変調をきたしてしまったのか、と思い、心療内科や精神科にも通院しました。
「他人の顔が区別できないという症状はたまにあるんですが、自分の顔がわからなくなるというのは珍しいですねえ…」
と、さして興味なさそうな口調で言い、主治医は高価なのに効き目のない抗うつ薬を毎月処方するばかり。医者には黙って、途中で通院をやめました。
あの男とは、階段ですれ違ったあの日以来会っていません。それに、私の顔が失われたあの日から、「タナカに会った」と知人に聞かされるドッペルゲンガー現象はぱたりと止みました。あれはいったい何だったのでしょうか。
どなたか、似たような経験をしたことがある方がいたら、助けてください。
傑作
痛みいります。
この文章の巧さはもしや…
素晴らしい
最後のほうマジでゾクゾクした
とても不思議で不気味な話
ドッペルゲンガーなのでしょうが異世界も感じてしまいました
久々にこんな怖くて面白い話読んだかも
もっと有名になって欲しい
似たようなお話が、かつて世にも奇妙な物語でも放映されていたような気がするね。
自分から見た自分と、他人から見た自分。気がつくと認識や行動の食い違い?がいつの間にか生じている。
それまでの自分が、後から来た”自分”に乗っ取られる・成り代わられる・なりすまされる・入れ替わる・・・・そして。
「そんなばかな!これはわたし(おれ)じゃない!」と。
このサイトでもトップクラスの話ですね
他の方とレベルが違う
顔が変わるはきっつ・・・
ためはち
凄い話だ…怖いし面白かった
こりゃ面白いわ
映像化したの観てみたい
江戸川乱歩の作品の様な不気味さがあり非常に面白かったです。
一気に読んでしまいました。
不思議。
怖い。
よく投稿してくれました。
この文章の凄さまさか…………..
絵に描いたような恐怖現象がないにも関わらず、じわりとくる怖さ。
傑作です。
面白い。
しかし「他とはレベルが違う」みたいなコメントはどこのコメント欄にもあるんだな。
テンプレなのかな
これが現実なら相当やばい事やない?