ひとりじょうず
投稿者:ねこじろう (154)
─何だか、お化けでも現れそう
ちょっと背筋が寒くなった。
さっそく携帯で悠太に電話をすると、すぐに出た。
「あ、悠太?今着いたんだけど」
「分かった。
そしたら悪いけど、階段で3階まで上がってすぐの301号に来てくれる?
鍵は開けとくから」
わたしは車を降りると、厚手の黒いコートを羽織る。
そして団地の正面入口から入り、コンクリートの階段を登っていった。
ようやく3階まで登りきると、いきなり正面に301号の赤茶けた鉄の扉が視界に入ってきた。
「こんにちはー」と言いながら、ゆっくりドアを開ける。
ギギギという軋む音と共に空気が動き、生暖かい臭気が鼻を直撃した。
それはなんとも言えない生ゴミのような臭いだ。
─何?この臭い、、、
わたしは思わず手で鼻を覆う。
下を見ると狭い玄関口に、男物の革靴と女性用の白のパンプスが並んでいる。
「どうぞー、遠慮なく上がってちょうだい」
薄暗い廊下の奥から、女の低く掠れた声が聞こえてくる。
昨晩電話から聞こえたあの声だ。
「失礼しまーす」
出来るだけ明るい口調で返事をし靴を脱ぐと、薄暗い廊下を真っ直ぐ進む。
突き当たりのドアを開けると、そこは居間のようだった。
食卓用のテーブルに椅子、その向こうのサッシ窓からはベランダの手摺越しに、鮮やかに赤く染まった鰯雲が覗いていた。
左奥のテレビからはバラエティー番組だろうか、時折けたたましい笑い声が聞こえてきて、ハッとする。
─悠太はどこにいるのだろう?
生ゴミのような臭いはさらに強まっているみたいだ。
わたしは顔をしかめた。
すると、右側の閉め切った襖の向こうから悠太の声が聞こえる。
「乃亜、そっちにいるのか?
こっち入って来いよ」
サイコっぽい!