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ヒトコワ

ねこじろうさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

ひとりじょうず
長編 2022/09/05 15:28 12,535view
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─何だか、お化けでも現れそう

ちょっと背筋が寒くなった。

さっそく携帯で悠太に電話をすると、すぐに出た。

「あ、悠太?今着いたんだけど」

「分かった。
そしたら悪いけど、階段で3階まで上がってすぐの301号に来てくれる?
鍵は開けとくから」

わたしは車を降りると、厚手の黒いコートを羽織る。
そして団地の正面入口から入り、コンクリートの階段を登っていった。
ようやく3階まで登りきると、いきなり正面に301号の赤茶けた鉄の扉が視界に入ってきた。

「こんにちはー」と言いながら、ゆっくりドアを開ける。
ギギギという軋む音と共に空気が動き、生暖かい臭気が鼻を直撃した。
それはなんとも言えない生ゴミのような臭いだ。

─何?この臭い、、、

わたしは思わず手で鼻を覆う。
下を見ると狭い玄関口に、男物の革靴と女性用の白のパンプスが並んでいる。

「どうぞー、遠慮なく上がってちょうだい」

薄暗い廊下の奥から、女の低く掠れた声が聞こえてくる。
昨晩電話から聞こえたあの声だ。

「失礼しまーす」

出来るだけ明るい口調で返事をし靴を脱ぐと、薄暗い廊下を真っ直ぐ進む。
突き当たりのドアを開けると、そこは居間のようだった。

食卓用のテーブルに椅子、その向こうのサッシ窓からはベランダの手摺越しに、鮮やかに赤く染まった鰯雲が覗いていた。
左奥のテレビからはバラエティー番組だろうか、時折けたたましい笑い声が聞こえてきて、ハッとする。

─悠太はどこにいるのだろう?

生ゴミのような臭いはさらに強まっているみたいだ。
わたしは顔をしかめた。
すると、右側の閉め切った襖の向こうから悠太の声が聞こえる。

「乃亜、そっちにいるのか?
こっち入って来いよ」

4/6
コメント(1)
  • サイコっぽい!

    2023/05/14/10:25

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