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ヒトコワ

ねこじろうさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

ひとりじょうず
長編 2022/09/05 15:28 12,536view
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どうやら、奥にも部屋があるようだ。

「お邪魔しまーす」

言いながら元気よく襖を開け、中を覗いた途端、強烈な腐敗臭が鼻をついた。

─う!

耐えられず鼻を押さえて下を向き、徐々に顔を上げていく。
それからわたしの頭が目の前の奇妙な光景を理解するのには、しばらくの時間を要した。

サッシ窓から射し込む弱い西日に照らされた、8帖ほどの畳部屋。
その真ん中に、広めの座卓が置かれている。
座卓の前には、悠太がこっち向きに正座して微笑んでいた。
ただ、いつもと様子が違う。

彼の背後の壁沿いには布団が敷かれ、白髪の女が一人天井に顔を向けて横になっている。
掛け布団から覗くその顔はミイラのように干からびていて、呆けたようにぽっかりと口を開けていた

そして改めて悠太の姿を見た途端、わたしの背中はぞくりと粟立った。

彼は何故か女物の明るいブラウンのかつらを被り、どう見てもサイズの合わない真っ赤なワンピースを無理やり着ている。
顔にはかなり濃いめの化粧をしているのだが、何か変だ。
よく見ると、顔の左半分だけ化粧をしているみたいなのだ。
どぎつい青のアイシャドウと真っ赤なルージュをひいた顔を不自然に崩しながら微笑む悠太が、

「ほらほら、何そんなとこにぼんやり突っ立ってるの?
あんた、挨拶も出来ないの?
だから、最近の若い娘は、、、」

まるで意地悪な姑のような口調で、わたしに愚痴を言う。
すると今度は、あたかも隣に誰か座っているかのように左に顔を向けると、いつもの悠太の横顔をこちらに見せながら、

「ママ、そんなこと言うなよ。
乃亜は初めてで緊張しているんだから」
と、わたしを庇う。

すると今度は右を向き、濃いめの化粧の横顔をこちらに向け、

「あなたは黙ってなさい。
こういうことは最初が肝心なの!
だいたい、あなたは女というものが分かっていない。
この間のチャラチャラした女のときなんか、、、」

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コメント(1)
  • サイコっぽい!

    2023/05/14/10:25

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