ひとりじょうず
投稿者:ねこじろう (154)
どうやら、奥にも部屋があるようだ。
「お邪魔しまーす」
言いながら元気よく襖を開け、中を覗いた途端、強烈な腐敗臭が鼻をついた。
─う!
耐えられず鼻を押さえて下を向き、徐々に顔を上げていく。
それからわたしの頭が目の前の奇妙な光景を理解するのには、しばらくの時間を要した。
サッシ窓から射し込む弱い西日に照らされた、8帖ほどの畳部屋。
その真ん中に、広めの座卓が置かれている。
座卓の前には、悠太がこっち向きに正座して微笑んでいた。
ただ、いつもと様子が違う。
彼の背後の壁沿いには布団が敷かれ、白髪の女が一人天井に顔を向けて横になっている。
掛け布団から覗くその顔はミイラのように干からびていて、呆けたようにぽっかりと口を開けていた
そして改めて悠太の姿を見た途端、わたしの背中はぞくりと粟立った。
彼は何故か女物の明るいブラウンのかつらを被り、どう見てもサイズの合わない真っ赤なワンピースを無理やり着ている。
顔にはかなり濃いめの化粧をしているのだが、何か変だ。
よく見ると、顔の左半分だけ化粧をしているみたいなのだ。
どぎつい青のアイシャドウと真っ赤なルージュをひいた顔を不自然に崩しながら微笑む悠太が、
「ほらほら、何そんなとこにぼんやり突っ立ってるの?
あんた、挨拶も出来ないの?
だから、最近の若い娘は、、、」
まるで意地悪な姑のような口調で、わたしに愚痴を言う。
すると今度は、あたかも隣に誰か座っているかのように左に顔を向けると、いつもの悠太の横顔をこちらに見せながら、
「ママ、そんなこと言うなよ。
乃亜は初めてで緊張しているんだから」
と、わたしを庇う。
すると今度は右を向き、濃いめの化粧の横顔をこちらに向け、
「あなたは黙ってなさい。
こういうことは最初が肝心なの!
だいたい、あなたは女というものが分かっていない。
この間のチャラチャラした女のときなんか、、、」
サイコっぽい!