十年以上前の話です。
県道から少し離れたところに地元では有名な廃病院がありました。
道路は照明が灯って明るいせいか、廃墟になったその病院は対比で嫌に暗く見えていました。
当時、怖いもの知らずだった私は、4人の友人と一緒に
肝試しのつもりでその廃病院の屋上まで行ってみることにしました。
地元の若者に粉々にされたであろう動かない自動ドアをくぐって、
3階建ての真っ暗な病院を100円ライターの火をつけて探検しました。
なんの薬かわからない錠剤や使われないまま踏みつぶされた処方袋の散乱した受付を通り、
棟の端にある入浴所で入浴用ベッドなどをびくびくして覗き込んでいると、
友人の一人が怖くなって帰りたいと言い出したので、
せめて屋上だけは見ていこうと病室のある2階、3階を飛ばして屋上まで行きました。
屋上には空になった貯水タンクが6個あり、いくつか蓋が開いて中に入れる状態でした。
「せっかく来たんだから」という理由で、じゃんけんで負けた二人が
貯水タンクの中に3分間入るという罰ゲームをしました。
私と気分を悪くしていた友人の二人が負け、
おずおずと二人で貯水タンクの中に入りました。
タンクの中は屋上では聞こえていた周りのわずかな物音もなく、
静かすぎて友人とつい「怖え!怖え!」と騒いでいましたが、
謝っている間は時間が進まない特別ルールを追加され、
静かに貯水タンクの中で友人と時間がたつのを待ちました。
友人の顔が次第に暗くなっていくのを覚えています。
その後、2階の病室の先にある非常階段から外に出ようということになり、
2階の廊下を進むことにしました。
病室が10室くらいある中で、扉が開いている病室があったので、
血気盛んな一人が病室の奥まで入っていきました。
驚かせようと思った私は、
友人が奥の窓付近まで行ったのを確認して病室のドアを一気に締めようとしました。
しかし、病室内でばたばたっと足音がした後、締めようとしたドアが急に押し戻されたので、
友人が超反応で締め出しを回避したのだと思い、その手を緩めました。
手を緩めるとドアは開かずに勝手にゆっくりと閉まり、
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。