小柄で細身の人のみ狙う暴漢
投稿者:N (13)
私は事情を説明して110番通報することになったが、正直そこからはよく覚えていない。
どうして私が襲われるのか分からないというのもあったが、暴漢に襲われる恐怖は思った以上に恐ろしい体験で、恐怖を刷り込むには充分だった。
ただ、私は通報を受けてやってきた一人の警官の言葉でもっと震えあがることになる。
「……これで三件目だな」
「例の暴漢なんですか?」
「恐らく同一人物でしょう。帰宅する人を襲う手口も、あなたが見た犯人の特徴もだいたい一致していますし」
「どうして私が襲われたんでしょうか。確かに人より小柄ですが……」
「え?まあ、失礼ながらあなたの容姿が犯人の好みだったのかと……。小柄な男性ばかり狙われるので」
……ん?
私は暫く首を傾げたまま動けなかった。
この警官は何を言っているのだろう。
小柄な男性が狙われていると宣ったのだろうか。
「えっと、その暴漢って男なんですよね?」
「ええ。小柄な男性ばかり狙う同性愛者のようです。なので、あなたも男性だからと言って夜道を一人で歩くのは控えて下さい。相手は大柄で、恐らくこの道の常習犯です」
暫く警官の忠告を受けていたが、聞いた先から反対の耳へと抜け落ちていくような、上の空な状態に陥った。
つまり、もしあのまま暴漢に襲われていたら私の貞操が奪われていたというのか。
確かに私は平均的な身長より低い男だが、暴漢は女性と間違ったわけでもなく、本当に男である私をはなから標的に選んだというのか。
私はぞわわっと肛門に力を入れて身震いした。
「それでは、戸締り気を付けてください。我々も周辺をパトロールしますが、何かあればすぐに通報してください」
私は親切な警官に一礼し、戸締りを確認した後静まり返った部屋に戻った。
何というか目まぐるしい一日だった。
私はそのままベッドに倒れ込み爆睡をかましてしまう。
翌日、バイト先で先輩にこの奇想天外な出来事をネタに話すと、先輩は盛大に笑った。
「お前、マジで襲われたのか。いや、確かに後ろから見たら女っぽいけど、まさか本当にな……。無事でよかったな」
「ホント、ありえないですよ。しかもその暴漢って同性愛者だったみたいで、あのまま声出せなかったら大切な何かを失うところでした」
在庫整理をしながら苦笑する私は、ふと先輩の腕へ視線を送る。
少し蒸し暑くなってきたというのに、今日は長袖を着ている先輩を不思議に思い、私はそれとなく訊ねてみる。
「先輩、長袖暑くないんですか?」
「……ああ、いや、ちょっと虫に刺されてな」
いつになくよそよそしい態度ではぐらかされたが、先輩は「さあ仕事仕事」と囃し立て、私達は客が立ち並ぶレジへと駆けていく。
先輩が犯人なんじゃ・・・・
ためはち
先輩wwwww