小柄で細身の人のみ狙う暴漢
投稿者:N (13)
客の噂話を聞いたせいか、私はその靴音を暴漢のものだと考え、恐怖と悪寒に体を震わせた。
私が急げば靴音も早まる。
これはもう完璧に私をストーキングしている。
そう思った。
私は小走りで近くの路地へ駆け込み、その後すぐに走り出し、知らない民家の門構えの影へと身を潜めた。
じっと息を殺していれば、例の靴音がコツコツと近づいてきて、私の前を通りすぎていくのがわかった。
暫くじっとしていると、その靴音が聞こえなくなったので、もしかしたらただの被害妄想だったのかもと思い至り、安堵して息を吐く。
一先ず民家から歩道へ躍り出て、左右を確認して再び歩き出す。
我ながら臆病な性格だと自責し、私は徒歩10分で着くはずの自宅まで20分くらいかけて到着した。
私の部屋はアパートの二階にある。
少し錆びている階段を響かせ帰宅すると、ポケットから鍵を取り出して鍵穴へと差す。
「……あれ?」
いつも通り解錠したつもりが何か違和感がある。
そう、鍵が開いていたのだ。
私は恐る恐るドアを引き、真っ暗な部屋を覗き込む。
玄関口を上がったらキッチンがあり、奥にたかだか八畳間のワンルームが続いているだけの小さな部屋だ。
特に誰の気配があるわけでもなく、私は一歩、靴脱ぎ場へ踏み入った。
「ん!?」
すると後ろから突然誰かに羽交い絞めにされ、大きく厳つい手で口許を塞がれた。
私は打ち上げられた魚の如く、必死に体をばたつかせるが抵抗の意味はなさず、私を襲う暴漢は私の身体をまさぐり始めた。
……待て待て待て、どうして私なんだ。
……ほかにも標的は居ただろうに。
私は思いっきり地面を蹴り上げると、ちょうど頭頂部が暴漢の顎に当たったのか小さな悲鳴が後頭部から聞こえた。
そして、少し緩んだ隙に私は暴漢の腕へ思いっきり噛みついた。
これが人類に許された最大の撃退法なのだ。
「ぐあっ!」
まるで警察犬に噛みつかれた犯人の如く、暴漢は私を振り上げて突き飛ばした。
床に尻もちをついた私は軽く壁面に頭をぶつけたが、すかさず「誰か―!」と声を上げた。
すると男は慌てた様子でフードをかぶり直し、千鳥足でアパートの階段を駆け下りて逃げて行った。
私の悲鳴を聞いて飛び出した隣の住人が、恐る恐る開きっぱなしの私の部屋を覗き込み、だらしなく床に座り込んでいる俺を見て「大丈夫ですか?」と声を掛けてくれた。
先輩が犯人なんじゃ・・・・
ためはち
先輩wwwww