真夜中の訪問者
投稿者:邪神 白猫 (7)
「っ……誰も……、いない……」
そう里美が呟いた——次の瞬間。再び目の前の扉は轟音を上げた。
———ドンドンドンドンドン!!
『……こ……ろ、……す』
「「ヒ……ッ!」」
小さく悲鳴を上げると、絡れるようにして床へとへたり込んだ私達。
轟音と共に、微かに聞こえてきた呻き声のようなもの。その声が、更に私達に強い恐怖を与えた。
その耐え難い恐怖に涙を流すことしかできなかった私達は、震える身体で互いを抱きしめ合うと、一睡もせずに朝を迎えたのだった。
※※※
「よく眠れた?」
「うん。……ありがとう、お母さん」
私の目の前にお茶の注がれたグラスを置いた母は、「そう、なら良かった」と言ってニッコリと微笑んだ。
あの日、始発が始まる時間帯を見計らって自宅を飛び出した私は、たいした荷物も持たずに実家へと帰ってきた。
会社にいる同僚達には申し訳ないが、とてもじゃないが出勤する気力も体力もなく、消化していなかった有給を使わせてもらうことにした。
それは里美も同じだったようで、昨日は一日有給を使ったらしい。
私に付き合ったせいであんなに怖い思いをさせてしまったと思うと、里美には謝っても謝りきれない。
「せっかく帰ってきたんだし、久しぶりに一緒にお父さん見ようか」
ふわりと優しく微笑んだ母は、そう告げると一枚のディスクを取り出した。
私の父は、まだ私が幼かった頃に他界している。あまりに幼かったせいか……正直、父の記憶はあまりない。
けれど、私が落ち込んだり何かに挫けそうになると、こうして母は「一緒に見よう」と誘ってくるのだ。
意外なオチで面白かったです
泣けた