真夜中の訪問者
投稿者:邪神 白猫 (7)
そんな母が未だに父に囚われているようで嫌だった私は、今まで一度も一緒に見ることはなかった。
なにより、自分の記憶にないモノを見せられることで、私の中に父はいないのだという現実を突き付けられる気がして嫌だったのだ。
「……うん」
私の口から出たその返事に、母はとても嬉しそうな笑顔を見せた。
自分でも、何故そんな返事を返したのかはよくわからない。けれど、なぜか無性に父に会いたくなったのだ。
流れ始めた映像を見ていると、里美からの着信に気が付き、通話ボタンを押すと携帯を耳に当てる。
「はい」
『澪……っ! ニュース見た!?』
焦ったような里美の声音に、何事かと驚きながらも口を開く。
「見てないけど……。何かあったの?」
『澪の住んでるマンションで火災だって! 昨日……いや、今朝? とにかく、沢山の人が亡くなったみたい! 澪の住んでる3階は特に被害が酷いって!』
「……えっ?」
『老朽化による漏電が原因じゃないか、ってニュースで言ってる! それより時間! ……あの時間なんだよっ! 火災があったのって、夜中の2時23分頃だって言ってるの……っ!』
「……っ……」
携帯を握りしめた手をゆっくりと下ろすと、目の前の映像を見つめる私は涙を流した。
『……澪! ねぇ、聞いてる!?』
握りしめた携帯からそんな里美の声が漏れ聞こえるが、私は流れる映像から視線を逸らす事ができなかった。
「っ……、ありがとう……お父さん」
テレビ画面に映し出されている父に向けて、私は小さな声を溢しながら号泣した。
あまりの恐怖から、『殺す』と聞きとってしまったあの声。
テレビ画面から聞こえてくるその声に、私はあの時の言葉をよくよく思い返してみた。
意外なオチで面白かったです
泣けた