私の祖父が子供の頃に体験した話です。
ある日の下校中、祖父はふと気まぐれを起こし普段は使わない裏道に飛び込みました。
しばらく行くと賑やかなお囃子が聞こえてきます。なんだろうと目をやると見世物小屋が張られていました。
見世物小屋を見るのが初めての祖父は大いに興奮し、こっそりテントをめくって覗いたそうです。
中には奇形の芸人たちが数多くいました。小人にせむしに両手足がないだるま人間、シャム双生児の美少女もいたそうです。
祖父は固唾を飲んで芸人たちが披露する芸に魅入り、一旦飲み込んだヤモリを生きたまま吐き出す紅襦袢の女に向け、惜しみない拍手を送りました。
直後、芸人たちが一斉に振り向きました。
「うわあっ!」
祖父は仰天しました。紅襦袢の女の首がにゅるにゅると伸び、こちらへ襲いかかってきたからです。
ろくろ首だ!
すっかり肝を潰して逃げ出す祖父の背後で哄笑が弾けました。芸人一座が笑い転げているのです。
どうにか無事家に帰り着いた祖父は、二歳上の兄を引っ張って見世物小屋へ取って返しました。
しかしそこにテントはなく、小さいお稲荷さんの社だけがたたずんでいたといいます。
「キツネに化かされたんじゃねえの?」
兄の言葉にぐうの音もでず、随分悔しい思いをしたそうです。
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これはいい話ですね。
こういう話めっちゃ好き
じいちゃんばあちゃんの時代は本当にあったんだろうなって気がする