踏切に佇むもの
投稿者:C (15)
短編
2022/02/27
10:16
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私が通っていた中学校の通学路には踏み切りがあり、自殺の名所として地元では知られています。
当時から怖がりだった私にとってなるべく避けたい場所でしたが、登下校で急いでいる時は使わざるえませんでした。
中2の春、その日部活で遅くなった私は門限に間に合わなそうで慌てていました。うちの親は厳しく、帰宅が遅れたら叱られるに決まっています。
夕暮れの踏み切りにさしかかった時、タイミング悪く遮断機が下りてきました。
内心舌打ちをし、跨いで無理矢理行こうか悩んだものの勿論そんな勇気はなく、大人しく電車の通過を待とうとしました。
ところが……
カンカンと警鐘の音が膨れ上がる中、線路の真ん中に髪の長い女の子がたたずんでいるのが目にとまりました。
ブレザー制服の背中をこちらに向け、俯き加減に突っ立っているので顔は見えません。
「ちょっと、危ないよ!」
思わず声をかけてもまるで反応がなく、どうしようか迷った末、遮断機をくぐって腕を掴み、力ずくで引き戻しにかかりました。
「えっ?」
私の腕はあっけなく宙をすり抜け、少女がゆっくり振り向きました。
「ひっかかった」
「何してるんだ、死ぬ気か!」
突如として強い力で引き戻され、尻餅付いた鼻先を猛スピードの電車が駆け抜けていきました。
私を助けてくれた通りがかりのサラリーマン曰く、線路に少女などいなかったそうです。
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