人生に絶望した日に読む本
投稿者:C (15)
短編
2022/03/16
23:59
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私は子どもの頃から本が大好きで読書が趣味です。
学生時代は学校の図書室を利用していましたが、社会人になってからは忙しく活字からも遠ざかっていました。
しかしある時住んでるアパートの近くに市立図書館があるのを知り、カードを作りました。
以来週末の図書館通いを楽しみに生きていたのですが……。
数日前、図書館に本を借りに行きました。好きな作家のミステリーの新刊がおめあてだったのですが、生憎先に借りられていました。
落胆して代わりの本をさがしている時、書棚に並んだ一冊の本の背表紙が飛び込んできました。
「『人生に絶望した時に読む本』?面白そうね。学級文庫にこのシリーズあったっけ、懐かしい」
何の気なしにパラパラとページをめくると、途中に一枚のメモが挟まれていました。
好奇心に駆り立てられて几帳面に折り畳まれたメモを開くと、定規で引いたように四角四面な筆跡で文章が綴られています。
「嘘……」
それは遺書でした。
ブラック企業で鬱病を患い、自殺を決意した青年が最期にしたためた手紙でした。
メモにはこの本を返却したら踏切に飛び込んで死ぬ事と、遺書を読んだ人間へのお願いが書かれています。
「『あなたが自殺を考えているなら、どうか僕の遺書を読んで思いとどまってください』」
悩んだ末、メモは畳み直して本に綴じました。私の他に受け取るべき人間がいると思ったからです。
後日調べた所、近所の踏切で青年が自殺していたと判明しました。
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