ある怪談師の朗読CD
投稿者:C (15)
昔の話です。
仕事帰りにファミレスで夕食を済ませた私は、レジ横のみやげ売り場で面白いものを見付けました。ある有名な怪談師の朗読CDです。
もともと怖い話が好きだったので、眠気覚ましにちょうどいいやと購入を決めました。
帰りの車中でCDを再生した所、早速例の早口が流れ始めました。
饒舌な朗読を聞きながら高速道路を走っていると、急にキュルキュルとノイズが混じりCDが止まります。
「欠陥品か?」
ハンドルに片手を添えたまま、片手でCDをセットし直します。するとまたキュルキュルと音がするのです。
もういいやほうっておこうと前に向き直った瞬間、CDが新しい怪談を語り始めました。
よりにもよって今走っている高速道路の話でした。
「でね、その人ね、高速道路の事故で死んじゃったんだよ……」
怪談師の低い声が耳を掠めるや、妙な胸騒ぎを覚えました。次の瞬間、スピーカーから大声が発されます。
「そしたらねえええええええ、成仏できずに出てくるんだああああああ」
驚きのあまりハンドルを切り損ねました。次いで体が勝手に反応し、間一髪ブレーキを踏みます。
どうにか助かった……。
ホッと息を吐く私の耳にスピーカーから舌打ちが届きました。
「なんだよ、死んじゃえばよかったのに」
後でもう一度再生してみましたが車中で聞いたはずの怪談は収録されておらず、目次にもタイトルが書かれていませんでした。
ブレーキを踏むのがあと数秒遅れていたら、私自身が高速道路の怪談になっていたのかもしれません。
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