廃屋で鬼ごっこ
投稿者:赤壁二世 (13)
「行き止まりじゃねえか!」
先行していたAが舌打ちしていたが、この場の三人はお前のせいだろと内心イラっとしていた。
擦りガラスのついた引き戸を開けとりあえず浴場へ身を隠す。
まるで大衆浴場のように洗い場が何層にも区切られていて、万が一奴が来ても身を屈めていれば隠れてやり過ごすこともできそうだった。
乾燥した冷たいタイルを足裏に感じながら、俺達は息を潜める。
廊下から「ホホホホホ」と独特な鳴き声が聞こえる。
「なにあれ」
「知らね。でもアイツの声で間違いない」
Aの質問に俺は答えた。
声は次第に大きくなり接近しているのが反響の大きさでわかったが、暫くするとロビーの方へ向かったのか遠ざかっていく。
完全に声が聞こえなくなったので、Aが立ち上がり「ちょっと覗いてくる」と忍び足で浴場を出た。
BもCも刺激的な体験をしたせいかホッと胸を撫でおろし、その場で背伸びを始めた。
俺も屈んでいる姿勢に疲れ立ち上がろうとするが、足が痺れてしまい近くに転がっていた風呂桶に躓いてしまい転げてしまった。
その際、桶がひっくり返った弾みで大きな音が鳴ってしまい、脱衣場のほうから血相を変えたAが駆け足で戻ってきた。
「何音立ててんだよ!アイツ戻ってきたぞ!」
「馬鹿〇男!」
俺はAとBに怒られてしまい、ちょっと落ち込んだ。
しかし、廊下の方から床のギシギシとした軋みと例の鳴き声が聞こえてきた。
咄嗟に物陰に隠れる俺達。
息を殺していると只ならぬ気配というか、奴の存在を感覚で掴めているみたいに何処を歩いているのか位置を感じ取れた。
どうやら脱衣場に足を踏み入れたようだ。
簀の子の軋み、タイルを踏み込む足音。
ドアを引く際のレールの摩擦音。
そこに自分自身の鼓動が加わる空間。
物陰から注視するAは、後ろ手で俺達に合図を送っていて、簡易的だが待機と行動のタイミングを教えてくれている。
現在は、待機状態。
奴が浴場内に入り、俺達を探してうろついている。
例の鳴き声は無く、本気で俺達の存在を探っているようだった。
奴が入口と離れた洗い場、俺達は逆方向に向かった途端、Aが手を軽く上げて行動の合図を俺達に送る。
忍者のような身のこなしで低姿勢のまま抜き足で脱衣場へと駆け抜けるA。
それに続き、C、B、最後に俺が奴の死角をついて脱出をはかる。
妖怪化した霊とかかな
面白かったです
小説読んでるみたいで面白かったです
創作だろうけど、なかなか鬼気迫るものがあり、読ませる話だ。
現実問題として、廃屋に無断で入ると不法侵入になるので注意が必要。どうしても入りたいときは自治体の許可(特殊な見学)を取って、昼間に探索するのが得策。大抵は許可が下りないが、うまく行けば下りることもある。
しかし、廃屋廃墟探索は素人はやるべきではない。
情景が詳しく書かれていて想像しやすくて面白かった
押し入れの話の中でも面白かった
うわー怖い
今までで一番怖い話だったかも