廃屋で鬼ごっこ
投稿者:赤壁二世 (13)
「ホホホホホホホホ」
ちょうど最後尾の俺が浴場を出たタイミングで奴は感づいたのか例の鳴き声を上げた。
「走れーー!」
見つかったのなら仕方がないと割り切り、俺は大きな声でAまで聞こえるよう指示を送る。
廊下を抜け、従業員カウンターが見えたところで最初のロビーへ戻ってきたことがわかる。
だが、俺達が足並みを止めることはなかった。
そのまま流れるように玄関フロアを抜け、古民家の外へと脱出し、山道を駆け下りる。
その時、俺は走りながらも後方を確認した。
僅かな月光にあてられた暗闇に浮かぶ古民家のシルエット。
二階の窓の一つ、俺が人影と目を見た部屋の窓辺に人影が立っていた。
周辺は暗いはずなのにその人影はくっきりと人だと認識できるレベルだった。
そして、逃げ帰るようにして廃村まで降りると、ようやく休憩を挟むことにした。
夏の蒸し暑さに加え、全力逃走したせいで喉もカラカラだった。
「あいつ何なんだよ、マジで」
「ぜってー人だよ、アレ」
AとBが不覚にも得体の知れない人物にビビってしまい追い掛け回され、挙句逃げ出した不甲斐なさに悪態づいている。
俺とCは持参していたお茶で喉を潤し、ふーっと一息ついて呼吸を整える。
「でもあれが人間だったとしてもマジモンのやべー人でしょ」
冷静になった俺がそういうと、Aがにやりと口角を上げ、
「人間ってわかれば怖くねえな。もう一回見てくるか?」
と悪戯坊主のような屈託のない笑顔で言った。
「いや、あんなとこで一人で住んでて俺ら追っかけまわすとか幽霊よりヤバイって」
と、Cが絶対に戻りたくないという面持ちで断りを入れる。
Cの意見にまあまあ納得したせいかAもそれ以上何も言わず、リュックからペットボトルを取り出して水分補給を始めた。
と、思いきや突如として、ブシャアアアアと口内からお茶を吹きこぼす。
「わわわ、やべ、やべ」
壊れたからくり人形かと見間違えるほど何もかも小刻みに震えだすA。
Bはちょっと笑っていたがAの視線を辿った後、目を見開いて絶句する。
俺もつられて視線を辿れば、民家の一つ、二階の割れた窓ガラスの奥から、あの白い恰好をした奴が白い顔を覗かせ、俺達に満面の笑顔を向けていた。
性別も何もわからない不気味な笑顔に戦慄を覚え、俺達はペットボトルを放り投げて再び逃げた。
妖怪化した霊とかかな
面白かったです
小説読んでるみたいで面白かったです
創作だろうけど、なかなか鬼気迫るものがあり、読ませる話だ。
現実問題として、廃屋に無断で入ると不法侵入になるので注意が必要。どうしても入りたいときは自治体の許可(特殊な見学)を取って、昼間に探索するのが得策。大抵は許可が下りないが、うまく行けば下りることもある。
しかし、廃屋廃墟探索は素人はやるべきではない。
情景が詳しく書かれていて想像しやすくて面白かった
押し入れの話の中でも面白かった
うわー怖い
今までで一番怖い話だったかも