ご先祖さまは大切にしなくちゃいけないよ
投稿者:峰 (38)
母はいつも、仏間に布団を敷いて寝ている。
ある晩、キィ、キィ、という音で目を覚ましたそうだ。はじめは風の音かと思ったが、寝ている部屋の中から聞こえる。暫くすれば止むかと思っていたが、十分たっても二十分経っても、ずっと同じリズムでキィ、キィ、キィ、と聞こえる。
変に思った母は、そっと音の出どころを探したそうだ。
すると、部屋の隅に置いてあるゴミ箱の蓋が、風も無いし何も当たっていないのに、ひとりでにキィ、キィ、キィ、と揺れているのである。
ギョッとした母は父を起こした。父もまた、勝手に揺れるゴミ箱の蓋を目にしたそうだ。父が恐る恐る蓋を外してみると、何もなかったかのように収まったという。
それから二、三日後、今度は母が仏間で本を読んでいると、急にどさっと音がした。
音の方を振り返ると仏壇がある。仏壇は、普段は飼い猫が荒らさないように扉を閉めているのだが、その中から音が聞こえた。
不思議に思って扉を開けると、お供物のみかんが下に落ちている。しかし妙なことに、みかんは台の中にしっかり入れていたので、誰かが手を加えない限り絶対に落ちないはずなのだ。しかも、台や他のものは何も倒れておらず、みかんだけが綺麗に下に転がっている。
とりあえず母はみかんを戻して、また扉を閉めた。
数分後、再びどさっと音がした。恐る恐る仏壇の扉を開けると、先ほどと同じようにみかんが落ちていた。
怖くなった母は、もしかすると最近忙しくて仏壇の扉を閉めっぱなしだったから、ご先祖さまが怒っているのかも…と思い、仏壇の扉を開けて、綺麗に掃除をし、お供物も新調して拝んだ。
不思議なことは、それ以来ぱったりと止んだと言う。
ご先祖さまは大切にしなくちゃいけないよ、と母は今でも口にする。
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