とある村に有名な地蔵があるらしい。どうも、女性に人気があるんだとか。
友人の夏代(なつよ)からそう聞いて、私は調べてみた。どうやらその地蔵を拝むと、驚くほど美人になるのだそうだ。「別嬪地蔵(べっぴんじぞう)」と呼ばれたその地蔵が気になって、私は行ってみる事にした。
行ってみると、地蔵があったのは人の少ない田舎の林の中だった。てっきり女性で一杯になっているかと思ったが、どこを見渡しても人っ子一人居ない。
私はその地蔵を拝んで、予約していた旅館へ向かった。
翌朝、私は驚いた。何故なら昨日とは比にならないほど顔が美しくなっていたからだ。
私はまた、あの地蔵へ拝みに行った。すると、より私の顔は美しくなった。
翌日も地蔵を拝みに行こうとすると、一人の老婆に出会った。
「あんた、べっぴん地蔵に行くんか?」
はい、と答えると老婆の顔は険しくなり、
「あそこには行かない方がいい。」
と言った。
「どうしてですか?」
すると、老婆は話し始めた。
「昔、一人の美しい女が居た。だが、その女は刃物を持った通り魔に顔面を切り刻まれて死んだ。それからは、あの林を通る者に女が取り憑くようになった。取り憑いては顔を奪い、終いには意識も奪われる。だから地蔵で封印しているんだ。」
「だからなんです?」
口が勝手に動いていた。
「可哀想じゃないですか。その女性。余計行かなきゃいけない。では、行ってきます。」
私はこの時、意識が奪われていた。本当は行こうと思えなかった。
そして私は一つ、思い出した。
私に夏代なんて友達は存在しない。
* * *
あれだけ注意したのに。
もう意識を奪われていたのか。
また、今年も犠牲者が出た。あいつに取り憑かれると一年後に地蔵の前で死ぬ。だから嫌だったんだ。
通り魔に刺さられて死んだ女——夏代は、また来年も犠牲者を呼ぶだろうか。
犠牲者の死体は、今日辺り地蔵の前にあるだろう。その死体は、夏代と同じように顔を切り刻まれているだろう。
























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