これは、私が小学5年生の時の話です。
10月の終わりという中途半端な時期に、木嶋(仮名)という転校生が来ました。
無愛想で、よく遅刻するし、授業中にふらっと席を立ってどこかへ行ってしまう。
クラスでは浮いた存在で、誰かと話しているところを見たことがありません。
一部の女子は「悪そうでカッコイイ」と騒いでいましたが、
木嶋は相手にしていませんでした。
11月のある日。
当時いじめられていた私は、掃除の班で用具を戻す役を押し付けられ、
ほうきやちりとりを抱えて校舎の隅にある用具庫へ向かいました。
人目のつかない場所で、できれば早く済ませて立ち去りたいと思っていました。
扉を開けると、そこに木嶋がいました。
気まずくて目を合わせないようにしていると、
その日の木嶋はどこか傷ついたような顔をしていました。
不意に目が合いました。
戸惑う私に、木嶋はかすかに微笑みました。
「……お前なら話してもいいか」
急に声をかけられて驚きましたが、
木嶋が初めて見せた柔らかい表情に私は思わずうなずきました。
「オレな、新興宗教の村にいたんだ。
逃げてきて、今ここにいる。……大人が信じられないから」
言われてみれば、木嶋はいつも何かに怒っているようでした。
遅刻や退席も、その反発だったのかもしれません。
「教祖様は最初は優しかった。
でもだんだん怒りっぽくなって、言ってることもめちゃくちゃになっていった。
それでも大人たちは嬉しそうに従ってた。
父ちゃんも母ちゃんも」
宗教のことはよくわかりませんでしたが、木嶋が“裏切られた”と感じているのは伝わりました。
「教祖様が老衰で死んだんだけど……死んでないことにしようとしたんだ。
誰かを教祖の姿に化けさせて、“教祖様は生きてる、言うことを聞け”ってな。
……馬鹿だろ。上手くいくわけねえのに」





























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