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どこかで見た話さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

ご縁のもの
短編 2025/06/08 21:48 1,840view
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その宗教のことを知ったのは、古本屋だった。
暇つぶしに立ち寄った古臭い文庫の棚。埃をかぶった一冊に、何の気なしに手が伸びた。

装丁は無地、タイトルは金字でただ「ご縁のもの」とだけ書かれていた。
著者の名前はなかった。

ページを開くと、薄墨で書かれたような文字が並んでいた。奇妙だったのは、どのページも誰かの日記のような文章で、内容がやけに現実的なこと。

「今日は朝から変な気配がした。例の“ご縁のもの”がまた玄関にいた」

「会社のロッカーの中に、封筒が。差出人はなし。でも中に俺の小学校の卒業写真。写っていないはずのものが、増えてた」

「風呂の鏡に、後ろの俺が映ってた。動きが半拍遅れてた。あれは“俺”じゃない。“ご縁のもの”だ」

読み進めるうちに、気づいた。

この本の内容、少しずつ“俺”の日常に似てきている。

気味が悪くなり、本を棚に戻して帰ろうとしたが、レジに立っていた老婆がこう言った。

「持ち帰ってください。あなたのものですから。ね、ご縁って不思議ね」

本は手に持っていたはずが、レジ袋に入っていた。俺は断れず、それを持ち帰った。

その夜から、始まった。

最初は些細な変化。
目覚ましをセットしていない時間にアラームが鳴る。
机の上に置いたペンが、翌朝逆向きになっている。
風呂場で、自分の肩に水滴が落ちてくる――天井は乾いていた。

ある日、気づいた。

部屋のどこかに「もう一人いる」。

見えない。けれど、いる。

最も怖かったのは、通話履歴を見たとき。
非通知の発信履歴に混じって、一件だけ自分の名前があった。

自分自身から、自分に電話がかかっていた。

俺はあの本を捨てようとした。が、どこに捨てても戻ってくる。
川に投げた。燃やした。
それでも、翌朝ポストに入っている。必ず、同じ場所に。

ついに、ページが変わり始めた。前に読んだときと違う記述が増えていた。

「もう逃げられない。なぜなら“ご縁のもの”は、追いかけない。初めから“中にいる”のだから」

「人の目には映らない。ただ、隣にいるだけだ」

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