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不思議体験

どこかで見た話さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

メリークリスマス
短編 2025/12/28 00:52 52view

十二月二十五日の夜は、一年でいちばん甘い匂いがする。
街全体が蜜みたいにとろとろで、光は柔らかく、笑い声は温かい。
それを聞いているだけで胸がぎゅうっと痛み、
その痛みが、彼にとっては唯一の“快感”だった。

男はその痛みを求めて、生きていた。

幸福が痛い。
楽しそうな恋人を見ると心臓が指で押しつぶされるみたいに軋む。
イルミネーションを浴びる男女を見ると、
胃の奥を熱い針で刺されたように震える。

その“どうしようもない苦しみ”が気持ちよかった。

「あぁ……いい……もっと幸せになってくれ……
 俺をもっと痛めつけてくれ……」

クリスマスは彼にとって、世界最大のマゾ的祝祭だった。

ある年。
彼はいつものように窓辺から街を眺めていた。

笑うカップル。
プレゼント。
手袋越しの手。
キスする影。

痛い。

痛い。
痛い。

……最高だ。

その瞬間、視界の端に黒い影がにじんだ。

最初は街灯の錯覚かと思った。
だが、影は恋人たちのすぐ後ろにすっと寄り添い、
二人の間に冷たい膜のように広がった。

そして、
ふたりの笑顔が、急に“弱った”。

会話が止まり、手をつなぐ指がほどけ、
緩やかに、不安そうに、距離ができる。

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関連タグ: #地獄#声#深夜#祭り
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