「あなたが笑った時、ほんのわずかに口角を上げてる“もう一つのあなた”に、気づかないだけ」
俺は今、鏡を見ない。
誰かと話すときも、相手の目を見ない。
写真はすべて処分した。
それでも、気配がある。部屋のどこかで、同じ呼吸をしてる気がする。
昨夜、眠る直前、本の最終ページが勝手に開いていた。
そこには、たった一行。
「ようやく、自覚されましたね。あなたは、はじめから“こちら”側の人でした」
俺は今も暮らしている。普通のように。
でもたまに、部屋の奥で物音がする。
あれはもう、他人じゃない。
俺の一部。
「ご縁のもの」は、外にいるんじゃない。俺の内側に、最初からいたんだ。
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