赤黒いクモの糸
投稿者:セイスケくん (28)
これは、ある村で起こった不思議なお話です。
村には古い神社があり、そのまわりに家がたくさん並んでいました。
村のはずれには、一人ぼっちで古い家に住んでいる石田さんというおじさんがいました。
石田さんの家には、「屋根裏に大きなクモがいるのを見たら、大事なものをなくしてしまう」という言い伝えがありました。
でも、石田さんはそんなお話を気にしていませんでした。
ある夜、石田さんが一人でお酒を飲んでいると、天井の隅から「カサ、カサ…」という音がずっと続いて聞こえてきました。
石田さんは天井を見上げましたが、何も見えませんでした。
その音はとても気味が悪く、石田さんは胸がざわざわして、頭から離れませんでした。
数日後、石田さんの働いている倉庫で火事が起こり、大きな被害が出ました。
村のみんなは石田さんをかわいそうに思いましたが、石田さんは「カサカサ」という音と火事に何か関係があるのではないかと心配していました。
夜になると、屋根裏からの音はますます大きくなり、石田さんは眠れなくなってしまいました。
ある夜、思いきって梯子を登って屋根裏を見たところ、クモの巣が広がっていて、その真ん中に大きな黒いクモがじっとこちらを見ていました。
石田さんはとても怖くなり、次の日、村の古老に相談しに行きました。
古老は「そのクモはただのクモではありません。早く何とかしないと、命を失うかもしれません」と言いました。
その夜、音はさらに激しくなり、石田さんが寝ている枕元まで聞こえてきました。
石田さんが恐る恐る目を開けると、天井のあちこちに黒いクモが広がり、うごめいていました。
石田さんは怖くなり、家を飛び出して神社へと走りました。
神社に着くと、古老が待っていて、低く震える声で古い呪文を唱え始めました。
呪文の声は風の音のようで、周りの空気がピリピリと緊張しているのがわかりました。
そのとき、「ザザザ…」という音がして、振り返るとたくさんのクモが集まって人の形をしていました。
古老が神社の鈴を鳴らすと、その影は霧のように消えました。
しかし、赤黒い糸が足元に残っていました。
次の日、石田さんの家は火事で焼けてしまい、石田さんはどこにもいませんでした。
神社のそばには黒いクモが一匹いて、その背中には石田さんの名前のような模様がありました。
それ以来、村ではクモを見ると誰も近づかなくなり、みんな怖がっていたということです。
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