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意味怖(意味がわかると怖い話)

件の首さんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

ハロウィンパーティー
長編 2022/10/30 12:01 6,369view
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「ちゃんと巻けてるー?」
 私は後輩のフミカに尋ねる。
「ちょっとズレて、肌が見えちゃってますね」
 フミカが私の背中を見て答える。
 私は包帯を置く。
「結構難しいもんだね、ミイラのコスプレって」

 私は大学の歴史研究サークルに入っている。
 歴史研究と言っても飲み会メインの緩いサークルだ。
 今日もハロウィンパーティーって口実で飲み会が開かれる。
 私は、大学の近くにあるフミカのアパートで、パーティー用の仮装の準備をしていた。
「んー、ドンキでコスプレ衣装買った方が良かったかな」
「そういうのは創造性の枯渇って、鹿山さん言ってたじゃないですか」
「まあそうなんだけど。あいつ妙なところにこだわるからね」
 1年上の鹿山リョウタの名前を出されて、私は少しドキリとする。
 1年ぐらい前から、私はリョウタと付き合っている。
 サークルで知り合ってから、何となく気が合って、忘年会の後にそういう感じになった。
 いざ付き合い始めると、リョウタは軽そうな割りにきちんと考えを持っている事が分かり、その後も付き合いが続けている。
 これはサークル内公認の間柄である。

 のだが、フミカがどうもリョウタに気があるらしい。
 はっきりと聞いた訳ではないのだが、立ち居振る舞いや話題に出す回数などで、何となくそう感じている。
 嫉妬心を差し引いても、恐らくは間違いない、気がする。
 とはいえ、疑惑段階で避けるのもやり過ぎだろう。
 今日の彼女の部屋での準備も、敢えて断ろうとは思わなかった。
 世界の全てが恋愛で回っている訳でもない。

 ハロウィンパーティーの仮装で私が選んだのはエジプトのミイラだった。
 あの漫画とかに出る包帯でグルグル巻き、サングラスをかければ透明人間でも通用するヤツだ。
 面積を考えて包帯を充分買ったつもりだったが、思ったより包帯はズレやすく、かなり厚く巻いても、動けば肌が露出する。
「もう少しでも肌にくっついてると良いんですけどね」
 フミカが包帯の位置を直してくれるが、身体の動きに合わせて滑ってズレるのが何となく分かる。
「やっぱり結構見えちゃってますよ」
「んー、良い案だと思ったんだけどね。やっぱり素肌はあきらめてTシャツの上からにしようかな」
「そうですね……ぁ……いや、まずいかな」
 フミカが呟いて口ごもる。
「なに? 案があったら教えて?」
「いや、肌にもう少しくっつけば良いっていうなら、なんですけど」
「ん? どういう?」

「ハンドクリーム付けたら、結構ベタベタするんじゃないかなって」
「あ、ハンドクリームか」
 確かにベタベタしていたら、包帯もきっちりとくっつきそうだ。
「でも、気持ち悪いですよね。全身に塗る感じになるでしょうし」
「いや、良いんじゃない? やってみようよ」
「そうですか? 分かりました」
 フミカはバスルームに行って、大きい円柱ボトルに入ったクリームを持って来た。私は使った事はないが、よくCMで見かけるお手頃なクリームだ。
「おっきいね」
「私、冬は凄く肌荒れするんで、いっぱい使うんですよ。じゃ、先輩」
「うん、お願い」
 フミカは薄いゴム手袋を付けて塗り始める。
 素手でも良いような気がしたが、肌をベタベタ直接触ると考えれば、確かに必要かも知れない。
 クリームは柔らかく肌に馴染む感触があった。
「巻いてみますよ」
 フミカが包帯を巻き始める。
 包帯はぴたりと肌にくっつき、簡単に動きそうにない。
「あ、良さそうだね」
「じゃ、急ぎましょう。遅れちゃう」
 フミカが手際よく包帯を巻いていった。

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