奇々怪々 お知らせ

意味怖(意味がわかると怖い話)

読書家さんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

田舎の親せきと「カカシ」
短編 2026/07/22 16:15 74view

大学の夏休みを利用して、僕は数年ぶりに祖父母が暮らす山奥の田舎へ遊びに行った。
そこは携帯の電波も途切れがちな、本当にのどかな村だ。
祖父母の家に着いて一晩過ごした翌朝、居間で朝食を食べていると、窓の外の畑に違和感を覚えた。
畑の真ん中に、ぽつんとカカシが立っている。
しかし、そのカカシの作りが妙にリアルなのだ。古い泥だらけの長袖シャツを着て、下を向いている。
「じいちゃん、あのカカシ、ずいぶんリアルだね」
僕が何気なく言うと、祖父母は食べる手をピタリと止め、顔を見合わせた。
少しの沈黙の後、祖父が重い口を開いた。
「ああ、あれはな……『身代わりカカシ』じゃ。この村の古い風習でな。悪い病気や呪いを、あのカカシに吸い取ってもらうために立ててある。だから、絶対に触ってはいかんし、じっと見て目を合わせてもいかんぞ」
祖母も引きつった笑顔で「そうだよ、絶対に近づいちゃだめだからね」と念を押してきた。
都会育ちの僕にはピンとこなかったが、老人の迷信を否定するのも悪いと思い、「わかった、近づかないよ」と約束した。
その日の午後、手持ち無沙汰になった僕は、居間の窓からこっそり畑を観察してみた。
祖父の言葉が気になって、つい見てしまったのだ。
カカシは相変わらず、うつむいたまま微動だにしない。
ただ、よく見るとカカシの服の袖口から、茶色く干からびた「本物の人間の手」のようなものが見える気がした。

ゾッとして目をそらしたが、村の奇妙な風習の正体を知ってしまったようで、僕はそれ以上深く考えるのをやめた。きっと昔、行き倒れた人の遺体か何かを祀っているのだろう、と自分を納得させた。
夜になり、激しい雨が降り出した。
古い木造の家がガタガタと鳴り、不気味でなかなか眠れない。
深夜2時を過ぎた頃、ふと喉が渇いて目が覚めた。
一階の台所へ水を飲みに行こうと廊下を歩いていると、玄関の方から「トントン…」と微かな音が聞こえた。
ノックの音のようだが、こんな大雨の夜中に誰だろう。
不審に思いながら玄関に近づくと、すりガラスの向こうに、人影が立っているのが見えた。
その影は、昼間に見たカカシと同じように、ぐったりと首をうなだれ、濡れた長袖シャツを着ているように見えた。
恐怖で足がすくんだ。
祖父の「絶対に触るな、目を合わせるな」という言葉が脳裏をよぎる。
カカシが、病気や呪いを乗せたまま、我が家に帰ってきたのだろうか。
僕は息を殺して、ドアの隙間から外の様子を覗き込もうとした。
すると、外の人影が、かすれた、しかし聞き覚えのある声でボソボソと呟いた。
「……おい、開けてくれ……じいちゃんだ……。婆さんが、婆さんが急に狂って、カカシの服を俺に着せて、畑に縛り付けやがったんだ……! 早く縄を解いてくれ……!」
僕は恐怖でパニックになりそうだったが、昼間の祖父の警告を思い出し、必死に踏みとどまった。

「これはカカシが化けて、じいちゃんの声で僕を騙そうとしているんだ。騙されてドアを開けたら、呪い殺される!」
僕は耳を塞ぎ、全速力で自分の二階の部屋へと駆け戻った。
布団を頭から被り、ガタガタと震えながら朝を待った。
やがて夜が明け、雨が上がった。
恐る恐る一階へ降りると、台所で祖母がいつも通り、笑顔で朝食を作っていた。
「おはよう。昨日の夜は雨が凄かったね、よく眠れたかい?」
「うん……まぁ。あ、じいちゃんは?」
僕が尋ねると、祖母は優しい笑顔のまま、窓の外の畑を指差した。
「おじいちゃんなら、ほら、あそこでカカシの見張りをしてくれているよ。 今日も村は平和だねぇ」
窓の外を見ると、昨日と同じカカシが、やっぱり微動だにせず畑の真ん中に立っていた。
僕はそれを見て、心底安心した。
「よかった、やっぱり昨日の夜のあれは、カカシが化けた怪異だったんだ。騙されなくて本当によかった」
——————————
## 💡 ヒント
本当に安心しても大丈夫でしょうか?
「昨日の夜の雨」と「今立っているカカシ」、そして「祖母の言葉」をよく考えてみてください。

1/3
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。