ハロウィンパーティー
投稿者:件の首 (54)
「――ハッピーハロウィーーーン!!」
思い思いの仮装をしたサークルメンバーが、クラッカーを鳴らし乾杯する。
ハロウィンパーティーの会場にしたのは、大学の近くの居酒屋だった。
大学の卒業生が経営しているその店は、学内のサークル御用達で、交渉次第で相当リーズナブルに利用が出来る。
貸し切りの店内はやや薄暗く、6つのテーブルの中央と壁沿いに生のカボチャのジャック・オ・ランタンが置かれ、中でロウソクが燃えている。
外見の雰囲気はそれなりにあるが、まあやる事は大体普通の飲み会だ。
「どんどん飲んで水分取って下さい、乾燥しちゃってますから」
「狼女のコスプレ」という事で、簡単に耳と鼻と尻尾をつけたフミカが、私の空いたチューハイのグラスにビールを注ぐ。
「ははは、そうよね。カラカラだもんね」
「水をあげてミイラをぴっちぴちに戻してやらないと」
テーブルの他のメンバーも、フミカにノって私に酒をすすめる。
「エジプトのミイラだよ。スパイス効かせて保存性高くしてるんだから、程ほどでいいんだよ」
適当にあしらいつつも、やはり酒量は増えていた。
何か落ち着かない。
「――お邪魔するぞ」
ビールのジョッキを持ったリョウタが、私とフミカのいるテーブルに来る。顔半分のゾンビメイクがなかなか本格的だ。
「あっ、鹿山さん!」
フミカの声が弾む。
「おごって下さい、いたずらしますよ!」
彼女はリョウタの腕を掴む。
「なんだ、トリックもトリートもどっちもなのか?」
「そうです、オオカミは強欲なのです。がうがう」
酔いもあってか、フミカのくっつき方はいつもより遠慮がなかった。
「フミカ、行儀良くしないと呪うよ」
冗談っぽさをなくさないようにしつつ、私はフミカを引き離そうとする。
「きゃあ、鹿山さぁん、マミーの呪いから、わたしを守って下さぁい」
「でも、俺ゾンビだし、どちらかって言うとミイラ側だぜ」
「ゾンビなら呪い無効ですよぉ」
まんざらでもなさそうなリョウタのにやけ顔がイラつく。
いや、イラついているのは、それだけが理由じゃない。
包帯がどうもむず痒い。
肌に合わないのか、ヒリヒリむずむずする。
一次会が終わったら、もう着替えよう。
そう思いつつ飲む。
だが、皮膚の違和感は次第に強くなってきた。
痛痒さはいつしか、じっとしているのが辛い程になっていた。
私は立ち上がる。
「先輩、どちらへ?」
フミカが白々しく尋ねる。腕がリョウタに絡んでいるが、何かする余裕がない。
「トイレ」
「ごゆっくり」
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。