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意味怖(意味がわかると怖い話)

GENGOさんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

滝の上の白い石
短編 2021/07/07 16:27 3,031view

私は幼いころは祖父の家がある山里で過ごしていた。
村の中には同年代の子供は少ししかいなくて、
そのため夏は川で釣りをしたり春秋は山で山菜を採ったり、
1人遊びをすることも多かった。

ある年の春、そろそろ蕨やゼンマイが出ているころだな、と
私は一人で山菜取りに出かけた。
いつも山菜取りに山に分け入るときには、山菜が多く生えるところまで
小さな沢を遡上するかたちで分け入ることが多かった。
その時も沢沿いに山に入っていった。
沢といってもサワガニなら沢山いるが魚などいそうもない小さな沢だ。
ただ途中に一か所だけ、左右から岩が張り出してちょっとした
滝のようになっている場所があった。
滝の落差は3~4mほどだったと思うが、ここだけは
慎重に手足の置き場、つかみどころを選んで苦労して登ることになる。
その時もどうにか無事に滝の横を登り終え、
やれやれと先を見たところ、へんなものがあるのに気が付いた。

滝の上は左右から張り出した岩が広がっているため、
ちょっと開けた空間になっている。
広さ12畳の岩畳の空間、といった感じだろうか。
そのほぼ真ん中、沢の流れの横に白い大きな石がひとつ、

ポツンと転がっていた。
子供なら両手で抱えて動かせるかどうか、といった大きさ。
それが岩畳のほぼ真ん中に一つだけ鎮座している。
落石がたまたまそこに転がってきた、という感じでもない。
なんだろうな、と思ったが、子供が考えてもわかることでもない。
そのまま通過して山菜を採り、帰宅時にも
なんだろうな、と思いながらもそのまま通過した。
ただそれだけの、ことではあった。多分、次の日には忘れさったと思う。

数年後、親とともに祖父の家からそこそこ普通の町に引っ越した私は
高校生になっていた。
ある日、高校の授業の時に少し時間があまったのか
先生と生徒の雑談タイムのような感じになった。
細かい成り行きは忘れたが、先生から
「登山をして遭難したらどうするべきか」
みたいなサバイバル術レクチャーみたいな話になった。
先生の話の大体の要旨は
・自分がどこにいるか判らなくなったら山頂を目指せ
・山頂まで出れば見晴らしがいいから、うまくいけば
 所在地やどっちになにがあるかわかる
・山頂なら登山道などがある場合もある

・尾根から尾根へ稜線を移動するなら体力的にきつくないし、
 捜索隊などからも発見しやすい
逆に、迷ったときにやってはいけないのは
・ひたすら下って、沢に出たら沢沿いに下山しようとすること
・沢は蛇行していたりするから必ずしも下山の短距離コースではない
・沢は谷底なので見晴らしも悪く方向感覚を失いやすい。
 捜索隊などからしても谷底は見通しが悪く見つけにくい
・行く手に崖や滝が現れたらそれ以上進めなくなるし
 いまさら崖を登って迂回する体力もなかったりして詰んでしまう
ということだった。
さらに先生はそうして詰んでしまった人の行動パターンとして
・しょうがないと、ここで滞在して捜索隊をまつことにする
 すくなくとも飲み水は確保できるのだし
・しかし風雨にさらされて救助を待つわけにもいかない
・なので沢の近くの岩陰、木陰などで風雨を避けられる
 ところに身をよこたえることにする
・だが、捜索隊などに発見されやすいように、近くの
 それなりに開けた場所に木の枝とか石などで
 目印になるような塔とかSOS信号を模した
 いかにも人為的なものを作っておいたりするらしい
という例を挙げて話してくれた。

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