逃げようとしたが――ビクともしない。
最近の女の子ってこんなに力強いの?
「そうじゃなくて、”寿命”って何?
俺の思ってる通りなら、怖くてできないから、そんなの」
「あれだよ、生きていられる時間のことだよ。
行動次第でどんどん縮むから、お兄さんみたいな若い人の方が価値があるんだよ。その中でも、お兄さんのは極上品なんだよね。
だから、いいレートで願い叶えられるよ」
どんなにかわいい笑顔でも、話してる内容が理解できないとこんなに怖く見えるんだな。
「寿命を使うような願いはないです。離してください」
少し震えてたかもしれないが、ちゃんと言えた。
「は? 助けてやっただろ。なんだよ、その態度は」
穏便に済ませたかったのに、胸ぐらを掴まれた。
めちゃくちゃメンチ切られてるし――近くにある顔が怖い。
「あと、うちのパンツ見たくせに」
見たけど、あれは不可抗力だろ。
そもそも、そんな短いスカートでドロップキックなんてすればそうなるに決まってる。
悪質すぎる当たり屋だろ、こんなの。
あまりに怖くて、震えるしかない俺の耳に、凛とした声が聞こえた。
「あなた、何をしてるんですか」
薄汚れた裏路地には似つかわしくない、スーツを着た金髪の美女が立っていた。
長い髪を後ろでまとめた、見た目からしてまともなキャリアウーマン。
「いや、特に……なにも……」
さっきまでの勢いがどこに行ったのか、俯いて声も小さくなっていた。
「その手はなんですか?」
「……なんでもないです」
責めるような声に気圧されたのか、胸ぐらを掴んでいた手が解かれた。
「何もしてないなら、さっさとどこかに行きなさい」
女性に促されて、悪魔は一目散に走って逃げていった。
「すいません、助かりました」
俺は深く頭を下げた。






















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