いや――
動かしているつもりなのに、身体が自分の意思に従っていない。
そいつとの距離が、少しずつ縮まっていく。
僕は思った。
こいつは僕を殺そうとしている。
いや。
それだけではない。
僕に取り憑こうとしている。
なぜか、そんな確信があった。
さらに近づいてくる。
あと数メートル。
あと二メートル。
あと一メートル。
僕は必死に目を逸らそうとした。
でも、身体が動かない。
そのときだった。
遠くから、
ゴォォォォ……
という音が聞こえてきた。
電車だ。
こちら側のホームに電車が入ってくる。
音が近づいてくる。
そいつの姿が、少しずつ歪み始めた。
電車のライトが見える。
轟音が大きくなる。
そして――
電車がホームに入線した。
その瞬間。
世界が弾けた。
人の話し声。
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