「……違うんですか?」
「ええ」
住職は少し間を置いた。
「あの場所に長い年月をかけて残った、死者の念が集まっているのでしょう」
僕は黙って聞いた。
「事故で亡くなった人だけではない。怪我をした人、突然命を失った人、その場で強い恐怖を感じた人……そういうものが、長い時間をかけて絡み合っている」
「じゃあ、あれは……」
「一人ではありません」
住職は静かに答えた。
「あれは、いろいろな人間の死や恐怖が混ざり合ったものです」
僕は背筋が寒くなった。
さらに住職は言った。
「そして、あなたは一度、あれに気づかれてしまった」
「……」
「そういうものは、自分の存在に気づいた人間に取り憑くことがあります」
僕は唾を飲み込んだ。
「目的は何なんですか?」
住職はしばらく黙った。
「魂を、引きずり込むためでしょう」
「……ホームから?」
「ええ」
僕の足元が震えた。
あの日。
地下ホームで僕が立っていた場所。
あれは偶然ではなかった。
僕は、落とされかけていた。
「ここまで強くなったものを、完全に祓うことはできません」
住職はそう言った。
「今回できたのは、あなたとあれとの繋がりを切ることだけです」
「じゃあ……」
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