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呪い・祟り

沈丁花さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

教えておくれよ、あの日のことを(Δδデルタ)
長編 2026/06/30 21:05 268view

 またもやあの水害臭が漂ってくる。親父はまた眼球のない青灰色の膨らんだ顔になり、身体のあちこちが吸い込んだ泥水でふやけ、ぶよんぶよんになっていた。
 そのうち親父の舌がべろんと外に飛び出し、鼻と口の中からイナゴだのカマドウマだのカエルだの、大量に飛び出してきた。泥や小石や枯れ草も、潮臭い水に混じって山ほど出て来た。
 やがて、親父の体内に潜んでいたもの共は一つのうねうねした形の集合体になり、ズルリ、ズルリ、ザラッ、ザラッと不気味な音を立てながら、ゆっくり、ゆっくりと前進しはじめた。

 ザーザー、バラバラバラと篠突く雨の中でも、その泥砂の怪物とお供の虫とカエル共とは、皆でピッタリくっ付き合っていて、崩れる気配さえない。
 他方では、親父は変わり果てた姿のまま、また夜闇のような色の鬼火を出していた。湿った強風が吹きあれる中、親父の怪火も狐の尻尾のようなものを出している。

 やがて、雑木林の方からセピア色の羽根の蛾がうじゃうじゃ飛んでくる。最初は羽根が美しいと思ったこの蛾は、背面に人間の顔のような不気味な模様がある。
 さらに、この集落では目撃例のないフクロウが飛び回っている。しかも、夏の昼間なのに、何故だかコウモリ共が飛び交っている。この動物たちも無数に出てくる。
 親父の口から湧き出たその泥砂の化け物は、親父と全く同じ大きさだ。その巨躯の幽鬼といやな感じのする空飛ぶ生き物どもは、くだんの人非人であるツマ子の施設の方向に進んで行った。

 俺は霊力を使いすぎて気絶している親父を背負い、昔家族で暮らしていたリビングに入った。ナガオ、せっかく掃除をしてくれたのに、ごめんな。洗面所で俺は親父の口の中の泥や砂石を丁寧に取り、ペットボトルの水で口をよくすすがせた。

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ーー同日8月13日 21時頃ーー

 親父が目を覚ました頃、ツマ子のいる施設から電話があったーーツマ子が脚に大怪我をして、救急搬送されたというのだ!
「だからさ、母さん(ツマ子)が施設で脚の骨を折ったんだよ!『一刻も早く手術しないと』って、医者が言ってんだ!とにかく早く来てくれよ!親の替えはいないんだぞ!」
と、ナガオが電話でオトを捲し立てていた。
 それとは対照的に、オトは「私はあの人(ツマ子)を許せないから行かない」と、繰り返すばかりだった。
 俺は通話にガサガサ、ガサガサという耳障りなノイズを入れ、
「そんなに心配なら、おまえが早くいけ」
と、低い声で囁いた。

それから、ポルターガイストを使って、リビングの出入り口のドアを荒っぽく開け閉めした。ドアが一人でにバタンバタンと大きな音を立てて開いたり閉まったりするから、ナガオは相当たまげたようだった。

 結局、ツマ子は親父の一撃でくたばるような人間ではなかった。ツマ子の母方は100歳近くまで生きた人が多く、生命力が人一倍強い血筋だったからだろう。但し、骨折した場所が悪かった為、難しい手術を受けることになった。

ーー同年(2014年) 9月20日ーー

「そうか、術後5年の生存率はおよそ半数なんじゃな。それで術後10年ではたった30%とはな。」
と、親父はしんみりと言った。
 あいも変わらず青白い顔で全身が膨れ上がり、下肢は浮腫んで足の皮がズル剥けになっている。痛かっただろうな、可哀想にな。
 俺は親父の痛ましい姿を見て、
「昔なら寝たきりになってただろうけど、今は医療が進んでるからなあ‥‥‥。なんであんなクソ女(ツマ子)が、リハビリなんてっ!」
と、やるせなさを隠せなかった。

5/6
コメント(2)
  • 沈丁花です。新作の執筆に行き詰まり、前回の作品を読んでいたら、アナザーエンドが出来てしまいました。″デルタ″には「違い」「変化」という意味があります。

    2026/06/30/21:12
  • 沈丁花です。このお話の前半部分は、原作とあまり変わりません。後半部に新たに肉付けし、違う終わり方にしました。

    2026/06/30/21:20

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